ロング | ナノ



Act. 9 *守りたいもの*





サソリ「オラ、本気で走れ!!!!やる気あんのか!???」

『は、はいっっ!!!!』



リクと修行を始めて1ヵ月。

基礎的な体力を作るために走り込みだの筋トレだのを中心に行っている。

毎日、朝から日が暮れるまで体力作り・・・。

弱音や文句一つ垂れずよく頑張っていると思う。うん。




サソリ「あと3周!!!ペース落とすんじゃねーぞ!???」

『はい!!!』



少し苦しそうだが、ペースを落とす事無く走り続けるリク。

最初は全然走れなかったし、筋肉痛が酷かったみたいだが最近はそういった様子は見られなくなった。

基礎体力が付いてきた証拠だろう。



デイダラ「旦那ー。」

サソリ「あん???」



旦那はリクを見据えたまま、返事だけする。



デイダラ「リク、結構頑張ってるよなー。」

サソリ「・・・あぁ。」

デイダラ「何の為にこんなに必死に修行してるんだろうなー???うん???」

サソリ「さぁな???・・・ラスト一周!!!!気抜くんじゃねーぞ!!!!」

『はい!!!!!』



リクが走る姿を二人並んで眺める。


何かに一生懸命になる姿って人を綺麗に見せるな・・・


オイラはそんな事を考えながらリクを眺めていた。





『サソリー!!!!次は???』



肩で息ををしながら次を急かすリクに旦那は苦笑する。



サソリ「今日はここまでだ。」

『はい!!!ありがとうございました。』



リクは頭を下げると地べたにペタンと座り込んだ。



『あー、暑いっっ!!!!』

デイダラ「これ飲めよ。うん。」



オイラがお茶を手渡すとリクは嬉しそうに受け取った。



『デイダラ、ありがとう。』

デイダラ「おう。」

サソリ「リク。」

『んー???』



リクはお茶を飲みながら旦那の方に顔を向けた。



サソリ「明日からチャクラを使った修行に入る。」

『はーい。・・・って、え!????』

サソリ「あん???まだ筋トレしていたいのか???」

『違う、違うっっ!!!!』



リクは勢い良く首を横にぶんぶんと振る。



サソリ「フン。なら、明日から始めるから覚悟しとけ。」

『はい!!!!』



リクは小さくガッツポーズをとると満面の笑みでオイラの方を向いた。



『へへ〜。ステップアップ嬉しいな♪』



屈託の無い笑顔にオイラも頬が弛む。



デイダラ「リク良かったな???うん!!!」

『うん♪ありがとう。』

サソリ「オラ!!!いつまで地べたに座り込んでんだ。さっさと帰るぞ。」

『は〜い。』



リクは元気良く立ち上がると、オイラの出した鳥に飛び乗った。

あんだけ走り込んだ後によくこんなに元気があったもんだ。



デイダラ「まだまだ元気が有り余ってるみたいだな???うん???」

『まさか〜。でも、明日から忍らしい修行が出来ると思うと不思議と元気が湧いてくるんだよね。』

サソリ「そんな元気も湧かないように、もう5周追加するんだったな。」

デイダラ「旦那、10周の間違いだろ???うん???」

『か、勘弁してよ。』



涙目で必死になるリクが面白くて、オイラはアジトに着くまで旦那と二人でからかい続けた。





**********





夜ご飯を終え、皆でリビングで寛ぐ。

アジトに居る間は家事や炊事をやらせてもらっている。

今日のご飯も好評だったし、皆喜んで食べてくれるから作り甲斐がある。



『ふぅ・・・。』



ソファーに腰を下ろし、ぼーっとしていたら後ろから肩越しに手がするりと伸びて来てギュウっと抱き締められた。



『きゃっっ!????』



驚いて振り向けば紫の綺麗な瞳と視線が交わった。



『もう、飛段!!!!驚かさないでよ〜////。』

飛段「ゲハハ。驚かすつもりは無かったんだぜェ???」

『本当に????・・・てか、手///!!!!!』

飛段「ん???」

『いつまで抱き着いてるの///????』

飛段「別に減るもんじゃねェし、良いだろォ???」



そうゆう問題じゃなくて・・・、

こんな美男子に抱き着かれてたら心臓が持たないよ///。


そんなあたしの気持ちに気付く筈もなく、飛段は更に強くあたしを抱き締める。



『は、離して〜///!!!!』

飛段「ゲハハ!!!顔真っ赤じゃねェか!!!!」

『うるさい///!!!!』



飛段は一頻り笑うと、あたしを開放して隣に腰を下ろした。



飛段「なぁー???」

『何〜???』

飛段「リクって家に帰りてーとか思わねェの???」

『え???』

飛段「コッチに来てから、一度も聞いた事無かったからよ。」

デイダラ「あ、それはオイラも思ってた。うん。」



テレビを見ていたデイダラも体をこちらに向ける。



『あ〜・・・、あたし帰りたいと思ってないんだよね。』

飛段「ダチとか家族とかに会いたいと思わねェの???」

『友達には会いたいけど、あっちに戻ったら独りぼっちになっちゃうから・・・。』

飛段「んぁ???独りぼっち???」



・・・そっか。

あたし両親が居ない事、皆に言ってなかったんだっけ???

そう言えば誰も身の回りの事とか聞いて来なかったもんね。



『あたし、両親を事故で亡くしちゃっていないんだよね。』

デイダラ「・・・。」

飛段「・・・そうか。」



二人はあたしの発言に気まずそうに目を伏せる。



デイダラ「変な事聞いちまって悪かったな・・・。うん。」

『二人共シンミリしないでよ。あたし全然気にしてないよ???』

飛段「・・・おう。」

デイダラ「・・・うん。」

『普段煩い二人がシンミリとか、似合わな過ぎて気持ち悪いぞ!!!!』



二人のおでこにデコピンを一発喰らわして、ニンマリと笑ってやった。



デイダラ「ってェ!???」

飛段「気にするんじゃなかったぜェ!!!!」

『あはは♪』



デイダラはあたしの頭を急にグシャグシャと撫で回した。



『な、何???』

デイダラ「このまま、ずっとここに居ろよ。うん。」

『え???』

飛段「そうだぜェ!!!!」

デイダラ「リクが居なくなったら、弄る奴がいなくなってつまらないからな。うん。」

サソリ「オレもそれには同感だ。」

『へ???』



いつの間にこんなに近くに来たんだろう???

周りを見回すと他のメンバーも近くにいる。



イタチ「リクが居ると空気が和む。」

鬼鮫「私もリクさんが居ると助かります。」

角都「料理も上手いしな。」

『・・・皆、ありがとう。』



皆と過ごして1ヶ月。

分かった事は皆優しくて、凄く素敵な人達だと言うこと。

端からしたら、されど1ヶ月と思うかもしれない。

でも、家族の居ないあたしに温もりを与えてくれた。

家族が居たら、こんな感じなのかなって・・・。

何処から来たのかかも分からない、そんなあたしに優しくしてくれる皆。

1日、1日が過ぎる度に皆に対する気持ちは大きくなっていく。

彼等を死なせたくない。

絶対にあたしが守るんだって・・・。

その為だったら、どんな辛い修行だって堪えてみせる。



皆の優しさに涙が流れそうになるのを必死に堪えて笑顔を作る。



『皆、大好きっっ!!!!!』






お父さん、お母さん・・・。

あたし今凄く幸せだよ。

あたしが皆を守れるように見守っててね???



両親からもらったピンクのピアスを触りながら、天に祈った。





〜Fin 〜



2011.7/21












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