やきもち


一万打お礼企画 真臼田さんへ



「今日もいい天気!」

あまりに眩しい青空に、お名前は目を細めて伸びをする。
こんなにいい天気の日は洗濯に限る、とお名前は朝から張り切って甲板で洗濯を干していた。


「お名前、すまん。」

「あ、シャンクスどうしたの?」

「こいつも頼む。」

そう言ってシャンクスはズボンとシャツを1枚ずつお名前に手渡す。

「うん。次のを回そうと思ってたから、ちょうどいいや。」

「そうか。おれも手伝おう。」

「え、いいの?じゃあ私先にこれを回してきちゃう。」

「ああ。」





ぱたぱたと足音を立ててお名前が洗濯場に向かう途中、無意識にシャンクスのシャツをぎゅっと握る。


「もー…。」



好きすぎる。





シャンクスのシャツとズボンのポケットの中に手を入れ、中に何も入っていないことを確認する。


「あれ…?」


シャンクスは普段ポケットに物を入れることは滅多にない。
カサッと指先に触れたものを、ゆっくりとお名前が取り出した。


「珍しい。」


小さな紙切れだった。
何かのメモだろうか。


「うそ、何これ。」


お名前は目を見開き、心底この紙切れを見なければ良かったと後悔した。




それは誰かの連絡先に、”連絡下さい”の文字。
女性の文字で間違いない。


彼女だったらどうしよう。
シャンクスを好きになる人なんて山ほどいるのだ。
自分だけではない。


そんなこと、昔から分かっていたはずなのに、どうして今こんなにも胸が苦しいのだろう。



お名前は俯きながらシャンクスのいる甲板へと戻る。


「お名前、すまんな。」


シャンクスがお名前に声をかける。


そんな優しい声で話しかけないで。
女の子は誰でも勘違いしてしまう。



「ううん、大丈夫。あとシャンクスこれ。」

「ん?」

「こういうのは大事にしまっておくものだよ。」


彼の顔を見て、精一杯笑って言ったつもりだった。
これくらいのこと、へのかっぱ。


そもそも片想いの私に、文句を言う資格はないのだと。



「お名前…、」


シャンクスが眉を下げてお名前を見る。



「洗濯干さなきゃ、ね。」


そう言って洗濯物に手を伸ばす。
そんなお名前の手首をシャンクスがそっと掴んだ。


「泣いてるじゃねぇか。」

「…っ、ふ、」


シャンクスの一言でお名前は自分が泣いていることに初めて気がついた。


ぼろぼろと涙が溢れて止まらない。


「これは、違うから。」

「何が違う?」





何も違わない。





「触らないで…、」

「ん?」

「シャンクスの彼女に申し訳ないよ。」

「彼女…?」




でも、振りほどけない。
自分の手首に触れた彼の掌が大きくて、温かくて、嬉しくて。





彼女、という言葉を聴いて、シャンクスが「ああ、」と言って笑う。


「それはお名前の勘違いだ。」

「え…?」




前回上陸した島で声をかけられ、あの紙切れを渡されたと言う。
受け取れないと返そうと思ったが、その女性は恥ずかしさからか、すぐに走って去って行ったとのことだった。
その場でポケットに入れたはいいが、それから忘れてしまっていたんだとシャンクスは説明した。



「じゃあ、彼女じゃないの?」

「当たり前だ。」


ハハハ、とシャンクスが青空を見上げて笑う。


「もー、何で笑うの!」

「いやすまん。やきもちなんて可愛い奴だと思ってな。」

「やきもち…!」



核心を突かれ、頬を赤くするお名前。




好きっていうのも全部ばれてる。





「変な誤解をさせて悪かった。」

「シャンクスが謝ることじゃないよ。」




シャンクスがお名前の頭をポンポン、と優しく撫でる。






誰よりも愛しているということ、もう少しお名前をからかった後で教えてやろうと、恥ずかしそうに下を向くお名前に、シャンクスは優しく微笑んだ。








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