覇王と姫 | ナノ






「見たか俺の華麗な剣術を」


「はいはい、相変わらず剣術バカきゃあっ!」




廊下を歩くヤムライハは何かに躓き、間一髪シャルルカンに抱きとめられる。




「ユリア…か?」


「どうしたの!?」




二人は床に座り込み涙を流すユリアの顔を覗き込む。




「泥だらけじゃない」


「何があったんだ?」




二人の顔を見たユリアは俯いた顔を上げ、途切れ途切れに言葉を発する。




『シンドバッド…すごく怒ってて……けど、どうして怒ってるのか…わからなくて…』




再びぽろぽろと涙を流すユリアに二人はぎょっとする。




「わ、私の部屋でお茶でも飲みましょう!」


「それがいい!立てるか?」




ユリアはシャルルカンの手を借りて立ち上がる。




『ごめんね…デートの邪魔して』


「「デートじゃない!!」」





****




「いいんですか」


「何がだ?」


「ユリアですよ。泣いてたじゃないですか」




ジャーファルの言葉に書類を書くシンドバッドの手がピタリと止まり、そのまま机に突っ伏す。




「何をやってるんだ俺は…」


「そう思うなら謝ってきたらどうです?」




ジャーファルはシンドバッドが処理した書類を彼に差し出す。




「さっきから書類が全部めちゃくちゃです。余計な仕事増やさないでください」


「…すまない」






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