覇王と姫 | ナノ


 



ガシャン、バンッ




『ない!ない!』




ドレッサーの引き出しをひっくり返し、目に涙を浮かべて取り乱すユリア。というのも、彼女がシンドバッドからもらった髪飾りが見当たらないからだ。




『お風呂を出た後どうした…?今朝付けてたかしら…』




ぶつぶつと独り言を呟きながら部屋を出るユリア。曖昧な記憶を辿りながら風呂場や執務室を駆け巡る。




「どうされましたかユリア様!?」


「お洋服が汚れます!」




女官の言葉を耳に入れず、地面に膝を着き中庭に目を凝らすユリア。


そんなユリアの目の前に一人の男が現れる。




「ユリアさん、もしかしてこれ探してますか?」




マスルールの手のひらでキラキラと輝く髪飾りに、ユリアは慌てて立ち上がる。




『これ、どこに…』


「朝議の後、床に落ちてました。ユリアさんがいつも付けてたので…」


『ありがとうマスルール!!』


「あ、いや…」




突然ユリアに飛びつかれ困惑するマスルール。

ユリアはマスルールから髪飾りを受け取ると、上機嫌で城の中へと戻った。






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