祈り

ついに、この日が来た。
今日は華代の手術当日。
昨日と一昨日に検査入院だった華代は、病院から電話をくれた。
僕は病院の電話番号をスマートフォンに登録しておいた。
今日はまだ華代から連絡はない。
何時から手術なのかも分からない。

現在、学校の2限目。
皆のお腹が空く時間帯だ。
僕の頭の中は華代で一杯で、授業なんて頭に入らなかった。
隣の席では英二が爆睡している。
普段はそれを見て自分の眠気に拍車がかかるけど、今日の僕は目が冴えきっている。
昨日電話した時、華代は元気そうだった。
病室が個室でテレビもなくてつまらないだとか、担当の先生が面白いだとか。
些細な話をして、昨日の電話は終わった。
手術当日なら、尚更話したい。
スマホをこっそり見てはポケットに片付ける行為を何度も繰り返し、電話を待った。

「はぁ…。」

一番後ろの席で、今日何度目が分からない溜息をついた。
着信がないか確認する為に、自然と手はスマホに伸びた。
画面には――東京都立病院の文字があった。
これは華代が入院している病院名だ。
僕はガタッと勢いよく席を立った。
先生やクラスメイトが一斉に後ろを向き、僕に注目した。
英二もむにゃむにゃと起きて僕を見た。

「先生!

気分が悪いので保健室に行ってきます!」

横開きのドアを力一杯開け、廊下を駆け出した。
気分の悪い人がこんなに元気よく走って保健室に行けるだろうか。
きっと今頃、教室は唖然としているに違いない。
でも今、そんな事は如何でも良かった。
人に見られないような裏庭まで猛ダッシュして、すぐ電話に出た。





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