約束

僕は事故で2ヶ月弱入院した。
その間、沢山のお見舞いがあった。
両親や愛を始め、テニス部のレギュラー陣や、遥々遠方から弟の裕太まで。
そして、華代が頻繁に来てくれる事が嬉しかった。
僕は事故にあってからすぐには意識が戻らず、1週間も眠っていたようだ。
華代はその間、毎日僕を見に来てくれていたそうだ。
それを聞いた時、凄く嬉しかった。
意識が戻った後も大好きな君がお見舞いに来てくれる事は、僕のリハビリの励みにもなった。
大型トラックに跳ねられた際の怪我は予想以上に治りが早く、医者には何度も驚かれた。
夏の全国大会には間に合いそうだ。

一方で、華代は告白の返事をしてくれなかった。
二度も勇気を出した告白を忘れられているんじゃないかというくらいに、君はこの話題に触れなかった。
病室で二人きりになっても、話す内容は桃や愛の事だった。
この関係を崩したくなくて、僕はずっと黙っていた。
そのまま今日という日を迎えてしまった。

それはとある日曜日だ。
空は雲ひとつない快晴だった。
そんな日に、病院の門へと向かっていた。
まだ足に痛みがあるから、松葉杖だ。
歩き辛くて不便だけど、盲目の華代に比べたら如何という事はない。

「やっとだ。」

小さく呟いた。
まだ痛み止めを飲んでいないと、足が痛む。
その痛みを忘れさせてくれるような存在と、今から落ち合う予定になっている。

「お待たせ。」

僕はそう言って、僕を待っていた女の子に微笑んだ。
すると女の子は嬉しそうにぱあっと笑い、僕の方を向いた。

『不二先輩、退院おめでとうございます!』

「ありがとう、華代。」

僕を待っていたのは華代だった。





page 1/3

[ backtop ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -