告白-2
相変わらず、僕を魅了する優美な音色だ。
華代ちゃんは僕に完全にお構いなしだ。
相当嫌われているみたいだ。
僕は華代ちゃんにゆっくりと近づいた。
でも、君は本当にお構いなしだった。
君と僕の距離が3mという時。
僕は君がとても哀しい表情で弾いている事に気付いた。
僕はラケットバッグを放り投げ、勢いよく地を蹴った。
再び地面に鈍い音を立てるバッグに、驚いた君は手を止めた。
僕は君に駆け寄り、華奢な肩に両手を置いた。
バイオリンを構えるのを止めた君は何事かと動揺している。
そんな君の瞳は、僕に向けられる事はない。
僕は君を抱き締めた。
強く、強く。
「…華代。」
君は驚きで身体を硬直させた。
バイオリンは静かに音を立てて芝生に落ちた。
自然と呼び捨てしていた。
でも、僕にはそんな事は如何でも良かった。
『先…輩…?』
「華代、手術受けよう。」
『!』
僕の台詞に、君の身体がビクッと強張ったのが分かった。
僕は更に腕に力を込めた。
君がどんな表情をしているのかは分からない。
『……受けません。』
君は囁くように言った。
僕の中で溜まっていた何かが溢れ出した。
「如何して…。」
自分でも声が震えているのが分かった。
その次には一心不乱に怒鳴っていた。
「如何して手術の成功を信じないで最初から諦めるんだ!!
目の前に少しでも希望があるのに、如何して抗おうとしないんだ!!」
こんな風に怒鳴るなんて、僕らしくない事は自分でもよく分かっている。
君は僕の腕の中で震え始めた。
『もう…やめて…下さい…。』
途切れ途切れに声を出す君が泣いているのが分かった。
それでも僕はやめなかった。
「華代!!」
『…っ。』
君は僕から離れようと、僕の肩を押し始めた。
僕はそれでも離さない。
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