好奇心 (第2章「変化」番外編)

赤髪で目付きの鋭い少年シルバーは、もう五日間も眠り続けている少女をじーっと見つめていた。
此処はフスベシティのポケモンセンターのとある二人部屋。
繋がりの洞窟で能力を暴走させて意識を失ったこの少女小夜は、丁寧に布団に寝かされて静かに眠っていた。
シルバーは小夜のベッドに椅子を少しだけ近付けた。
小夜の顔を見つめ、かれこれ一時間は経過している。
シルバーには考え事が多いのだ。

先ず、小夜が何故能力を暴走させたのか。
シルバーには謎でしかないのだ。
見た目は人間、中身はポケモン。
目の前にいる小夜は、自分でそう言っていた。
何処から見ても人間なのに、中身はポケモンである。
その存在を、シルバーが父であるサカキから聴いたのはもう何年も昔の事だ。
だが何故、ポケモンの能力が備わっているのだろうか。
人造生命体であると小夜からまだ白状されていないシルバーには、目の前にいるこの少女は謎だらけだった。

耳とか生えてねぇよな…。

シルバーは立ち上がると、恐る恐る小夜の頭を覗き込んだ。
如何やら耳らしきものは見つからない。
やはり見た目は普通の人間だ。
ふと、その端整な少女の顔が目に入った。

……人形みたいだな。

恐ろしく整った顔立ち。
きめ細やかな白い肌。
長い睫毛の下には、紫の水晶のような瞳が隠れている。
こんなに美しい少女が目の前で眠っていたら、大概の男は触れたくなるだろう。
シルバーは無意識に手を伸ばしている自分に気が付き、はっと我に返って手を素早く引っ込めた。

俺も、こいつに触れたいってのかよ。

一人で赤面したシルバーは、額に手を当てて深く溜息をついた。
やはり自分も一人の男らしい。
もう一度ちらりと小夜の顔色を窺ってみる。
その頬には赤みがなく、本当に生きているのか疑問になる程だ。

「はぁ…。」

深い溜息が自然と溢れた。
何時までこうやって小夜を一人で見守り続けなければならないのか。
理性との戦いだ。
二人のポケモンたちは修行だと言い張り、朝早くから出掛けている。
エーフィはやたらとシルバーのポケモンたちを修行させようとする。
早く強くならなければ困る事でもあるのか、と疑問に思うばかりだ。
実際にエーフィは、今後訪れるかもしれないロケット団との戦闘に備えている。
それをシルバーが知る由もなかった。

「早く起きやがれ。」

小夜が目を覚ますのは、この数時間後だった。



2014.4.10



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