ランニング

ポケモンたちに話があると言ったシルバーは、脚を組むのをやめて真剣な表情をした。
ポケモンたちは円陣になってシルバーの元へ集まり、シルバーの話に耳を傾けた。
普段は陽気なクロバットたちもこの緊張感を読み取り、真剣そのものだ。
シルバーは静かに話し始めた。

「予知夢が現実になるかもしれない日の一ヶ月前から、俺はこの研究所を出る。

これはオーキド博士と話し合って決めた事だが、小夜は知らない。

あいつの事だから気付いているかもしれないがな。」

オーダイルは眉尻を下げながら考えた。
三ヶ月程すれば、此処を出なければならない。

「小夜のポケモンたちと仲が良いお前らには悪いが、一ヶ月だけ離ればなれになる。」

“でも小夜は耐えられるのかなぁ…。”

レアコイルが呟いた。
ポケモンたちに悪いとシルバーは言うが、シルバーにとって苦渋の決断だった筈だ。
シルバーは小夜の事が本当に好きだ。
それに小夜もシルバーと午前中に離れただけでシルバー不足だと言っていた。
お互いに離れるのは辛いだろう。
嘗て一週間だけ別行動をしたが、その時も寂しそうにしていた。
シルバーはレアコイルが小夜の部屋を見上げているのを見て言った。

「小夜には寂しい思いをさせてしまうだろうな。

だが、次の予知夢を現実にする訳にはいかない。」

前回の予知夢が現実になるまでの間は、小夜と共に行動していた。
だから今回は敢えて別行動を選んだのだ。

「お前らはついてきてくれるか?」

シルバーは全員の目を見た。
ポケモンたちは全員頷いた。
この主人と共に何処までも行く。
サカキを倒したいというのなら、全力で修行をする。
バッジを集めたいというのなら、勝利を掴むまでジムに挑戦する。
この主人のポケモンである事が、自分たちの誇りなのだ。

「……サンキュ。」

シルバーは目を閉じ、穏やかに口角を上げた。
ポケモンたちから深い信頼を感じる。
それはポケモントレーナーにとって幸せな事だ。
シルバーは立ち上がると、軽く肩を回した。

「さて、走るか。」

ポケモンたちが気合いの入った表情をした。
如何やらポケモンたちもついてくるようだ。
シルバーがふっと笑ったのを合図に、皆がスタートした。
オーダイルはレアコイルをダンベル替わりにし、頭上で持ち上げて走り出した。

“オーダイル、重くない!?”

“重い…!”

鋼タイプの身体の重さは半端ではない。
浮遊組のゲンガーとラティオスと飛行タイプのクロバットは応援に回る。
小柄なマニューラはシルバーの脚元で必死に走っている。
ポケモンたちを見て苦笑したシルバーは、マニューラのスピードに合わせて走った。
シルバーたちがオーキド研究所を一周した処で、クロバットが浮遊組に言った。

“ゲンガー、ラティオス!

競争しない?”

“よっしゃ、負けないぞ!”

“負ける気はない。”

意外と競争心のあるラティオスに、クロバットとゲンガーは目を瞬かせた。
だがすぐに笑い合い、三匹は横一列に並んだ。
クロバットがシルバーの目を見た。
何を求められているかを悟ったシルバーは、走りながら口角を上げた。

「よし……始め!」

シルバーの言葉を合図に、三匹は一斉に飛行を始めた。
やはりラティオスが速く、クロバットとゲンガーが続いた。
唯一持ち上げられているだけのレアコイルが、目を丸くしながら言った。

“あんなに張り切ってたら、朝ごはんまでにへろへろになっちゃうよ!”

“大丈夫、俺は既にへろへろ…。”

オーダイルはひーひーと言っているし、マニューラも必死だ。
この後、皆で一緒にシャワーになりそうだ。





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