13

日曜日の空は晴れ渡っていて、日光浴日和だ。
ルーナと私は城を出て、湖を訪れた。
複数の生徒がお喋りやデートを楽しんでいる傍ら、二人でブナの木の下でのんびりと読書をした。
不思議な眼鏡をかけているルーナは、ザ・クィブラーを上下逆さで熟読している。
私はその隣で、魔法使いの冒険物語を読んでいた。

「ん…?」
「騒がしいね」

城の方角からピュンピュンという音が聞こえる。
空気を裂くような音だ。
ルーナが眼鏡をかけたまま首を伸ばした。
すると、ピュンという高い音と共に、明るい筋のような何かが一直線に飛んできた。
これは、花火だ。
煌びやかな花火がルーナと私の目の前で止まると、虹色に弾けて消えた。
ルーナは驚きながらものんびりと言った。

「びっくりした」
「でも綺麗だったね」

驚いている私たちに向かって走ってきたのは、双子のウィーズリーだった。
その手には、パチパチと光る花火を持っている。
双子は私たちに大袈裟に頭を下げると、フレッド、ジョージの順に言った。

「聖女アフロディーテとその従者ラブグッド殿」
「本日も悪戯日和で御座いますな」
「ところで、ナイスな眼鏡だな」

ルーナは自慢げに微笑んでみせた。
ジョージは片手に持っていた花火をぽいっと投げた。
青色の花火は私の頭上をくるくると回った。

「わあ…凄い!」
「君も遊ぶかい?」

ジョージは優しく微笑むと、頷いた私に片手を差し出した。
私は本を置き、その手を取って立ち上がった。

「これ、投げ合えるんだ」

ジョージは飛んでいた青色の花火を素手で掴み、フレッドに投げた。
フレッドがそれを掴み、私に投げた。
私はそれを反射的に受け取った。
花火が手の中でパチパチと音を立てた。

「わ…」
「熱くないだろ?」

更に、フレッドは手に持っていた虹色の花火を投げた。
双子と私の三人で、愉快な花火の投げ合いが始まった。
花火はくるくると円を描いたり、色を変えたりして、私を飽きさせなかった。
ルーナは眼鏡をかけたまま、マイペースにザ・クィブラーを読み耽っている。
花火はひとりでに空高く飛ぶと、パンという音と共に弾けて消えた。

「綺麗…」
「俺たちが作ったんだぜ」
「本当に?」

空を見上げていた私は、隣に立ったジョージの顔を見た。
ジョージの目には希望の色が満ちていた。

「俺たち発明家さ。
将来、店を出したいんだ」
「発明した商品で?」
「人を笑わせるのが好きなんだ。
さっきの君も楽しそうだったから、嬉しいよ」

二人は人を笑わせるのが上手だ。
人気者で、いつも沢山の生徒に囲まれている。

「楽しそうな君を見たら、やっぱり俺って人を笑わせるのが好きなんだって思った。
君は笑ってる方が可愛いよ」
「何言ってるの、もう」

恥ずかしくて、頬が熱い。
私は優しく見下ろしてくるジョージから視線を逸らした。
フレッドがジョージの背中をビシッと叩いた。

「いい感じじゃないか!」
「う、煩い馬鹿、もう行くぞ!
アフロディーテ、またな!」

フレッドを引っ張っていったジョージの頬が赤い。
駆け足で城に戻る二人を、私は手を振りながら見送った。
ジョージに可愛いと言われた。
恥ずかしいけど、嬉しいな。



2019.8.15




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