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その子は聖女のようだった。
育ちの良さそうな顔立ちが上品で、清楚で優しい雰囲気の女の子。
シルバーに近いアッシュブロンドの艶髪は、妖精の鱗粉でも舞い落としそうだった。

その子はマクゴナガルからアフロディーテ・スチュワート≠ニ呼ばれた。
小さな頭に組分け帽子が乗せられた。
ふむふむと考える仕草をした組分け帽子は、寮名を高らかと叫んだ。

「レイブンクロー!」

嗚呼、別の寮になっちゃったか。
その子は無邪気で可愛らしい笑顔を浮かべながら、レイブンクローの長テーブルへと向かった。
レイブンクローに組み分けされて良かった、という心境が垣間見える笑顔だった。
俺は隣から腕を小突かれた。

「おい、其処の双子。
そんなに見てると首が捻れるぜ?」

背中側にあったレイブンクローの長テーブルを見ていた俺は、友人リー・ジョーダンの声で我に返った。
気付けば、首が捻れそうな程に振り向いていた。
双子の片割れであるフレッドも、同じようにあの子を見ていた。
流石は双子だと思ったけど、他にもあの子を見ている生徒は男女問わず沢山いた。

「何見てるんだよ、ジョージ」
「お前こそ見てるだろ、フレッド」

斜め向かい側に座っていたハーマイオニー・グレンジャーも、首を伸ばしてあの子を見ていた。
かの有名なハリー・ポッターと、弟のロンの姿はない。
二人はホグワーツ特急に乗り遅れた。
今頃、何処かを大冒険しているかもしれない。
羨ましいし、恐れ多い。

俺はもう一度だけあの子に振り向いた。
今年も愉快な一年になりそうだ。



2019.6.3



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