22

深夜、猫に化けた私は禁じられた森までふらりとやって来た。
ダンブルドア校長からホグワーツ城の巡回を頼まれているとはいえ、禁じられた森は対象外だ。
こんな真夜中にこの森に入ったのをスネイプ先生が知ったら、眉間の皺を深くして怒るだろうな。
この森で、猫に化けていた私はジョージに名前を呼ばれたんだ。

―――アフロディーテ。

あの時から、ジョージは私がアニメーガスだと勘付いていたのかもしれない。
私は猫のまま、鬱蒼として不気味な森の空を仰いだ。
不意に枯れ葉を踏む音がして、素早く振り向いた。
其処にいたのは、ヒッポグリフのバックビークだった。
以前、ハグリッドが紹介してくれた魔法生物だ。
誇り高い魔法生物であるバックビークは、自ら頭を下げてきた。
猫の姿をした私を見て、アニメーガスだと気付いたのだろうか。
私は変身術を解き、お辞儀を返した。

「バックビーク。
私が分かったの?」

私は両腕を伸ばし、バックビークの逞しい身体を抱き締めた。
バックビークは嘴を私の顔に寄せた。

「よしよし」

私は最初、バックビークの事が怖かった。
私は肉食動物や天敵である蛇が苦手で、本能的に恐れてしまう。
物心ついた頃から猫のアニメーガスだったのが原因だろうか。
でも、バックビークと一度接してしまえば、もう怖くなかった。
私は自然と口を開いた。

「バックビーク、あのね…迷ってるの。
ジョージに話すのか、話さないのか…」

―――俺の方が動物の扱いが上手いよ。

何かを察しているような言い方だった。
私はジョージが抱っこしたり撫でたりしてくれる手つきが、とても好きだ。
優しくて丁寧で、ジョージらしい触れ方をしてくれる。

「話してもいいのかな」

バックビークは翼を畳み、枯れ葉の上に身体を落ち着けた。
私はその隣に小さくなって座った。

「あなたは如何思う?」

バックビークが顔を擦り寄せてくるから、その顎を擽るように撫でた。
私はレイブンクロー色のカーディガンを脱ぐと、バックビークの背中に掛けてあげた。
バックビークには小さいけど、少しは暖かい筈だ。
私は変身術で猫に化け直し、バックビークが顔の前で組んでいる腕の上に丸くなった。
爪が長いけど、怖くない。
バックビークは私のカーディガンを咥えると、猫の私の上に掛けてくれた。

優しいなあ、バックビーク。
凄く暖かい。
今夜はこのまま眠ってしまおう。

バックビークは翌朝までずっと私を守っていてくれた。
目が覚めた時には、太陽が顔を出していた。
私はバックビークにお礼を言うと、大慌てで城内に戻ったのだった。



2019.10.4




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