天使とハゲ悪魔

『聞いてよ華代!』

あたしは一番の親友、桃城華代と電話をしていた。
国光との電話の時間まで余裕があるから、華代に癒されたかったんだ。
今日の変人の件や、越前君の件を話した。
聞き上手な華代はベストなタイミングで相槌を打ってくれる。

《また変な人に捕まったんだね。》

『今日の人は格別に変人だった。』

国光と交際を始めた当初の変人よりも酷かった。
今後また何か言い寄られないかと不安だけど、絶対に撃退する。

《その越前君って人も変わってるね。》

『そうなの。』

《でも仲良しなんだよね?》

『まあね。』

学習机に頬杖をつきながら苦笑した。
市民テニス大会以来、越前君はあたしに弱みを握られているというのに、あたしとの交友関係を続けている。
気付けば仲が良くて、国光もお兄ちゃんもあたしと越前君が仲良くするのを了承してくれている。

『この後電話で越前君に文句言うの。』

朋ちゃんの件に関して、言いたい事が沢山ある。

《あんまり怒り過ぎないようにね。》

『ありがと。』

やっぱり華代は天使だ。
癒しのオーラが電話を通して伝わってくる。
ほわほわとした気持ちになりながら、あたしは棚からとあるCDを手に取った。

『華代のCD聴いてたら落ち着くよ。』

《それで落ち着いてくれるなら、是非。》

華代は海外のオーケストラにソロのバイオリニストとして参加した事がある。
このCDはそのリハーサルでレコーディングしたものだ。
華代は天才バイオリニストとして音楽界で名を広げ、その活動が海外にも及んでいる。
このCDの中には、華代があたしみたいだと話してくれたあの曲も入っている。
スマホに取り込み、音楽アプリで毎朝聴いている。

『年末はおうちにお邪魔するね。』

《楽しみにしてるよ。

お兄ちゃんも喜ぶから。》

年末になれば、桃城宅に初めてのお泊まりをする予定だ。
桃先輩は越前君の話を興味津々で訊ねてくる。
けど、べらべらと話し過ぎるのは良くないと思っているから、今回の朋ちゃんの件は話さないと思う。

『ねえ、華代の学校は如何?』

《今日はね――》

華代はよく特別支援学校の話をしてくれる。
図書室の点字の本の話だったり、勉強の話だったり。
目が見えるあたしには感じられないような何かを、華代は毎日感じて生きている。
あたしは点字をスラスラと読めるようになった。
出掛けられるようになった華代のサポートにも回り、上手く誘導出来るようになった。
もっと華代の為に、何か出来る事を探したい。





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