秘密の触れ合い

ガードレールのない歩道を愛と二人で歩く時は、必ず俺が道路側を歩く。
三年前に出場出来なかったW杯の記憶を、少しでも思い出させたくないからだ。
愛の小さな手を握っていると、柔らかく微笑みかけてくれた。

『ありがとう、迎えに来てくれて。』

「構わない。」

迎えに行くと言ったのは俺だ。
これから愛の部屋で勉強する約束をしている。
愛は友人に勉強を教えているが、愛に勉強を教えているのは俺だ。
俺が渡したノートをお供だと言っている愛は、勉強熱心だ。
ついでに言うと、テニスとゲームにも変わらず熱心だ。

『期末テスト嫌だなー。』

「お前なら問題ない。」

『もしそうだとしたら国光のお陰。』

愛は俺に屈託ない笑顔を向けた。
その笑顔に癒され続けて、気付けば2年半になる。
俺たちの交際は順風満帆に進んでいた。
喧嘩もなく、愛に対する不満もない。
他愛のない話をしながら歩き続け、不二宅に到着した。
愛が玄関の鍵を開け、俺たちは家に入った。

『どうぞ。』

「ありがとう。」

『お兄ちゃんはまだ帰ってないみたい。』

誰もいない家は静かで、広い一軒家を更に広く感じさせた。
先に手洗いうがい!と姉の真似をした愛の後を追い、洗面所へ向かった。
二人で洗面所の鏡に映ると、俺たちは2年半前よりも成長したと改めて感じる。
鏡に映る愛を見つめていると、手を洗い始めた愛が俺の視線に気付いた。

『如何かした?』

「お前は背が伸びたな。」

『国光もね。』

俺たちの身長差は縮まった。
愛は更に美人になり、変わらず俺を魅了する。
タオルで手を拭く愛の肩を、背後から抱き寄せた。

『…ん?』

愛は照れ臭そうに微笑んだ。
抱き寄せたものの、不二宅の洗面所では背徳感がある。
一旦、愛を解放した。
愛の部屋に行けば、また抱き締められる。





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