過剰に意識-2

今日は自宅にお母さんとお兄ちゃんがいた。
二人は国光を歓迎してくれた。
あたしの部屋に国光と二人で入ると、間もなく勉強が始まった。
国光と隣同士でふかふかの座布団に座り、触れ合いそうな距離にいる。
こうやって部屋で二人きりになる直前に限って、あんな雑誌のページを見つけてしまうなんて。
前々から意識していたのに、余計に意識してしまう。
勉強に上手く集中出来ずに、顔がじわっと熱くなった。

「愛、聞いているのか。」

『えっ、あ…ごめんね…。』

国光があたしの苦手な数学を教えてくれているのに、頭の中では全く別の事を考えていた。
あたしは慌てて参考書を見つめ直した。
国光は持っていたシャーペンを置き、あたしと向き合った。

「如何したんだ。」

『…え…。』

「明らかに様子がおかしい。」

胸の音がドクンドクンと煩く鳴った。
恥ずかしくて、国光の顔を見れない。
俯きながら黙り込んでいると、心配そうな国光の声がした。

「何かあったのか。」

『……。』

国光はあたしとして≠ンたいと思う?
そんな事、訊ける訳がない。
意識しているのは、多分国光も同じだ。
それでも、直接訊く勇気なんてあたしは持ち合わせていない。

「悩みがあるなら、何でも話して欲しい。」

国光にこそ話せない内容なんです。
ぎゅっと拳を握っていると、国光があたしの頬に手を伸ばした。
ビクッと反応してしまい、後ろに身を引いてしまった。

『…あ…ごめん…。』

「……。」

国光は目を伏せ、手を下ろした。
これじゃあ、まるで拒絶しているみたいだ。
あたしは必死で弁解しようと試みた。

『違うの、あのね…その…。』

「何が違うんだ。」

『拒絶してる訳じゃなくて…。』

どんな風に言えばいいんだろう。
もうこの際、直球で話してしまおうか。
いや駄目だ、覚悟が足りない。
国光は改めてあたしに手を伸ばし、肩に触れた。

「拒絶していないのなら…来てくれ。」

その声が不安そうで、あたしは心苦しくなった。
国光に擦り寄ると、強く抱き締められた。
この腕の中に縋って、何度励まされたか分からない。
あたしの心音が煩くて、国光に聞こえてしまっているかもしれない。

「如何しても話せないのか。」

『…もう少しだけ待って欲しい。』

やっぱり話せる気がしない。
今話せば、妙な事を口走る気がする。
頭を冷やしたい。

『だって…心の準備が…。』

「心の準備…?」

あたしは目を見開き、はっとした。
既に妙な事を口走ってしまった気がする。
察しの良い国光なら、何かしら気付いてしまったかもしれない。
そろっと国光の顔を見上げると、少しだけ気不味そうな顔をしていた。

「……そうか。」

『……そうです。』

多分、気付いたんだと思う。
それでも国光は何も言わないし、何も聞かなかった。
あたしを気遣ってくれているんだね。
ありがとう、ごめんね。
国光の事が好きだから、意識してしまうんだよ。



2018.6.18




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