進展した関係

期末テスト前になると、放課後の部活は禁止だ。
大人しく帰宅する生徒もいれば、能天気に遊びに行く生徒もいる。
その一方で、あたしたちみたいに学校に残って勉強をする生徒もいる。

『…。』

「起きなよ。」

『あ…ごめん。』

そういえば、同じクラスの越前君に古文を教えているんだった。
昔の人の文章を眺めていると、睡魔が襲ってくる。
越前君はあたしの前の席の椅子に腰を下ろし、あたしと一つの机で向き合っている。
あたしは教室の異変に気が付いた。
生徒が一人もいないではないか。

『あれ、結構寝てた?』

「少しね。」

ついさっきまで教室内は騒がしかったのに。
頬杖をついて寝落ちていたようだ。
うーんと伸びをしてから、頬をぺちぺちと叩いた。
昨日は放課後にテニススクールに行った後、帰宅してから勉強した。
気付けば日付を2時間も過ぎていて、少々寝不足だ。
ふわーと欠伸をすると、越前君が苦笑した。

「間抜けな欠伸だね。」

『煩いなあ、プレステ返しなよ。』

「……やだ。」

越前君を黙らせるには、あの市民テニス大会の優勝賞品の件を口に出せば一発だ。
弱みを握って早2年、何度プレステと言ったか分からない。
勉強に戻り、教科書を参考にしながら越前君に説明を始めた。
同じ教科書を覗き込んでいると、ちょっと顔が近い。
それでもあたしは気にしないし、越前君も気にしていないと思う。
あたしたちの関係はこの2年で良い方向に進展した。
あのバレンタインデーの事なんて滅多に思い出さないし、越前君とは気兼ねなく接せる。
お互いにとても仲の良い友人になった。

『今の説明で如何?』

「うん、分かった。」

『それなら良し。』

越前君は熱心に古文の教科書に書き込んだ。
成績が悪過ぎると、青学の高等部に上がれない。
あたしは練習問題を解きながら呟いた。

『桜乃ちゃんたち遅いね。』

「HRが長引いてるんじゃない?」

そうかもしれないね、と簡単に受け流した。
今日の勉強会もお馴染みのメンツが集合する予定だ。
あたしは国光のノートと向き合った。
今度の期末テストも学年10位以内に入ってやるんだから。



2018.4.27




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