愛情 後編-2

邪見やりんの元へ戻りながら、隣を歩く花怜は深く吐息をついた。
花怜を見据えると、苦笑が返って来た。

「何をしていた?」
『薬を煎じて、四魂のかけらを渡して、それから…。』
「何だ。」
『質問攻めにされました。』

花怜が立ち止まり、私も立ち止まった。
頬を紅く染めている花怜は、自分の巫女装束をじっと眺めた。

『殺生丸さまの匂いがすると言われました。』
「…。」
『つ、付き合っているのかと訊かれて…。』

鼻の効く犬夜叉は、花怜と寄り添い合って眠った私の匂いを嗅ぎつけたらしい。
花怜は必死に主張した。

『でも何も答えませんでした。
本当ですよ、自慢なんてしていません。
…したかったですけど…。』

自慢、か。
お前は私と想いが通じているのを自慢したかったのか。
ふっと表情が緩んだ。
しかし、花怜は上目遣いで私を窺った。

『怒りましたか…?』
「何故その必要がある?」
『その…恥ずかしくありませんか?
私などと交際していると知られて…。』

まだ私など≠ニいう表現をするのか。
花怜は目を伏せていたが、何かを感じ取ったのか、息を呑んで顔を上げた。

「鈍い。」
『え…?』
「見くびるなと言った筈だ。」

私は花怜の手を握り、強引に引いた。
人間の振りをしたままの身体を抱き竦めると、花怜は驚いた表情をしていた。

『殺生丸さま…。』
「誰に知られようと、構わぬ。」

花怜は顔を上げると、ようやく無垢に微笑んだ。
私に強く抱き着き、呟くように言った。

『やっぱり殺生丸さまのお傍が一番です。』
「なら、傍にいろ。」

やはり花怜には言葉で愛情を伝えなければならないようだ。
愛しているとも伝えたし、長く肌を重ねたというのに。

「まだ足りんようだな。」
『何がですか?』
「身体に教え込んだつもりだったが…。」
『…!』

今夜もたっぷりと思い知るがいい。
蒸気が出そうな程に顔を紅く染めた花怜の手を引き、私は歩き出した。



2018.7.28




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