変化-2

小夜はこの五日間で何が起こったのか、エーフィから一通りの説明を受けた。
一行は小夜の意識がなくなってから二日で繋がりの洞窟を抜け、フスベシティのポケモンセンターへと直行した。
小夜が意識を取り戻すまでポケモンセンターからは動かないと決め、小夜をシルバーに任せてポケモンたちは修行しようと決断した。
最終的にシルバーの手持ちポケモンは皆一進化、ヒノアラシは二進化を遂げたのであった。

「今夜は出発するつもりはない。

次の行き先が決まっていないからな。」

ベッドに腰掛けているシルバーは自販機で購入したミネラルウォーターを飲んでから言った。
ボーマンダはニドリーノとゴルバットに背中の上で遊ばれながら、小夜に顎を掻いて貰っていた。
アリゲイツは小夜の膝の上で寝転んでおり、エーフィとバクフーンは深夜のおやつに木の実を頬張っていた。
アリゲイツは小夜に相当懐いたようで、シルバーを御主人と呼ぶ一方で小夜を呼び捨てにしていた。

『じゃあ私はお風呂に入ろうかな。

シャンプーしたいの。』

俺も一緒に入る!というアリゲイツを尾で軽く叩いたエーフィ。
小夜はリュックから寝巻と下着の入っている袋を取り出した。
エーフィは前回と同じように言い放った。

“男性諸君、覗かないように!”

「エーフィは何と言った?」

『覗くなってさ。』

「…っ、んな事するか!

早く入れ!」

真っ赤なシルバーはそう一蹴すると、リモコンを取ってテレビを付けた。
小夜はふわりと微笑み、エーフィが中へ入ったのを確認してから洗面所の扉を閉めた。
シルバーがあの微笑みを見るのも実に五日振りで、懐かしい気持ちになった。
アリゲイツは頬を染める主人へと視線を送ると、その主人は目付きを鋭くして睨んでくる。

ウツギ研究所のポケモンだったアリゲイツはシルバーに盗まれ、強制的にシルバーのポケモンとなった。
初めて野生のポケモンと対峙した際は、自分のレベルが低くて戦闘にならなかった為、シルバーから酷く暴力を振るわれた。
だが二回目の戦闘は今目の前にいるバクフーンがヒノアラシだった時だ。
ヒノアラシの主人であった小夜は殴られそうだった自分を特殊な能力を用いて助けてくれた。
小夜は人間ではなくポケモンでもない不思議な少女だ。
彼女や彼女のポケモンの監視下では、主人はポケモンへの暴力や暴言を抑えている。
だが相変わらず鋭く睨みつけてくるのは健在だった。
そしてその主人は如何やら小夜に気があるらしいが、本人は自分の中にある気持ちを認めていないようだ。

ボーマンダとバクフーンがシルバーの様子を視界に入れている中で、アリゲイツはベッドに上るとシルバーの隣に座った。
撫でて欲しいとか、優しい言葉を掛けて欲しいなどの高望みした意図はない。
ただ主人の隣に座りたかったのだ。
急成長してレベルの上がったバクフーンは、木の実の硬い皮を剥きながらもシルバーを視野に入れている。
シルバーはアリゲイツを一瞥しただけで話し掛けはしなかった。
アリゲイツはシルバーを見上げて言った。

“御主人は小夜が好きなの?”

「バフッ!」

アリゲイツの台詞を聴いたバクフーンが、口に入っていた木の実を変な声で吹き出した。
ボーマンダは笑うのを堪えながらティッシュを数枚咥えて取ると、バクフーンへ渡してやった。
口内に木の実が入ったままのバクフーンは会釈しながらそれを貰い、吹き出した木の実を拭いた。

「何だ?

お前何を言った?」

シルバーがポケモンの言葉を理解出来ないからと言って、ストレート過ぎる問いだった。
シルバーが眉間に皺を寄せる中で、ニドリーノとゴルバットは怒られるのが怖くて後ろを向き、ボーマンダは口が笑っていなくとも目が笑っていた。

“小夜はバショウが好きだから無理だよ。”

調子に乗ったボーマンダは堂々とそう言った。
アリゲイツはそれを聴いて目を丸くした。

“小夜には相手がいるの?!”

アリゲイツは思わず尋ねてしまった。
シルバーを差し置いてポケモンたちの恋愛話は加速する。

“小夜は御主人に抱き着いたと聴いて、もしかしたら御主人に気があるんだとばかり…。”

アリゲイツはシルバーをちらちら見ながら言った。
シルバーは自分がネタにされている気がして苛々し、通訳の小夜が早く戻ってきやしないかと高速で貧乏揺すりをした。




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