能力の暴走-2

シルバーが目を覚ました時、何時の間にか寝袋の上で眠っていた。
隣には未だ眠っている小夜がいる。
エーフィが念力でシルバーの寝袋を出して寝かせてくれたのかもしれない。
むくりと起き上がると、他のポケモンたちは眠っているにも関わらず一匹だけ周辺を見張っているエーフィがいた。
そして見慣れないポケモンが一匹。

「マグマラシ…?!」

エーフィにしごかれた成果を発揮したヒノアラシは、早くもマグマラシへと進化を遂げていた。
ボーマンダの大きな身体に寄り添い、疲労でぐっすりと眠っている。
ワニノコも早く進化させてやると心に決めたシルバーは、エーフィに話し掛けた。

「おい。」

声を掛けられたエーフィはシルバーに顔を向けた。

「少しは寝たのか?」

エーフィは何も言わずに頷いた。
何が小夜の能力を暴走させたのか、まだ原因が分からない為に付近を警戒しているのだ。
もしかしたら何かの気配に影響されて小夜は暴走したのかもしれない。

「この女は何故ロケット団に狙われている?」

監視カメラはロケット団のものだと言った小夜に尋ねたかった事を、シルバーは敢えてエーフィに尋ねてみた。
シルバーがエーフィの言葉を理解出来ないのにそう尋ねてくるのは、此方の反応を見る為だと悟ったエーフィは無視を決めた。
そして眠っているワニノコへと視線を移動させ、続けてシルバーの目を見た。

「…。」

きっとエーフィは何故優しく出来ないのかと尋ねている。

「ポケモンは人間の道具だ。

道具に優しくする必要はない。」

それを聴いたエーフィは腹が立ち、近くに落ちていた小石を念力でシルバーの額にぶつけた。

「いてっ!

いてぇなこの野郎!」

シルバーはぶつけられた小石をエーフィに向かって投じた。
だがそれはエーフィの結界により防御され、更に跳ね返って再度シルバーの額に直撃した。

「っ、くそ…!」

“私はシルバーが嫌いだ。”

とエーフィは冷たく言い放つと、シルバーと目を合わせるのを拒絶してしまった。
シルバーの根はロケット団気質そのもので、こういう人間がいるから不幸になるポケモンが多数存在するんだとエーフィは強く確信した。
主人である小夜はよくこんな人間と旅をすると決意したものだ。
シルバーは寝袋に仰向けで寝転び、再度睡眠を試みたが寝付けなかった。
顔だけ小夜の方へ向けると、整った顔立ちが目に入る。
目が覚めたら何故ロケット団に狙われているのかを問い詰めてやろう。

その後、続々と起床し始めたポケモンたちと同時に目を覚ましたシルバーだが、小夜が意識を取り戻すような様子はなかった。
ポケモンたちに昼食を与えた後、シルバーは小夜が眠っているままでも先へ進もうと決意した。
ボーマンダは小夜を背に乗せて移動しようかと思ったが、一足早く行動したシルバーが小夜をおぶった。

「俺がおぶる。

代わりにお前らは野生のポケモンの対処をしろ。」

ボーマンダはシルバーの言動に目を瞬かせたが、すぐに頷いて二人のリュックを長い首で持ち上げ、自分の背に乗せた。
如何やらエーフィよりもボーマンダの方が物分かりが良いらしい。
耳元で規則正しく寝息を立てる小夜に、シルバーはほんのり頬が赤くなる。

“まさかこいつまで小夜にフォーリンラブ?”

エーフィが堂々とそう言うと、ボーマンダの足元を歩くマグマラシは間違いないだろうと頷いた。
ヒノアラシの時よりも少し身体が大きくなったマグマラシは、歩数を減らして皆についていける事が嬉しかった。
体力の回復を待つワニノコとズバットはボーマンダの背に乗っており、二ドラン♂はエーフィのすぐ後方を一生懸命ついてきていた。

「?

何だお前ら。」

前方を歩くポケモンたちが全員振り向いてシルバーの顔をじっと見つめる。
その顔は何処か笑いを堪えているような表情を浮かべていた。
その意図が分からないシルバーはポケモンたちを何時も通り睨んだ。
此処で初めてワニノコが口を開いた。

“御主人の照れ隠しだ。”

主人の暴力が怖くてずっと沈黙を貫いていたワニノコだが、シルバーが小夜をおぶっている今殴られることはないし、何より小夜とその手持ちの三匹がいる事に安心していた。

先頭を歩くエーフィはランプを咥えながらお得意の溜息をついた。
何故こう雄ばかり仲間になるのだろうか。
シルバーの手持ちも、ボーマンダもマグマラシも雄だ。
女の子である主人は早く目を覚ましてくれないだろうか。
一行は狭い洞窟の道を進みながら、次の目的地であるフスベシティを目指した。



2013.2.5
2013.2.16 改




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