分岐点

殺生丸さまを先頭に、私たちは歩き進めていた。
今後如何するのか、私はずっと考えていた。

―――お前の隣は居心地が良い。
―――終わったら、一緒に来てくれる?

殺生丸さまとりんの言葉が、答えを導き出してくれた。
皆と真っ向から話さなければ。

山の中腹を歩き続けていると、麓に目的地である村が見えた。
りんは私の手を強く握ったまま、黙り込んでいた。
このまま通過して欲しいと思っているのは一目瞭然だった。
けれど、道の分岐点を発見した。
麓へ続く道の前で立ち止まった私は、久し振りに声を発した。

『此処までだよ。』

そう伝えると、りんは俯いてしまった。
繋いだ手を離してくれそうにない。
私は片膝をつき、りんと視線を合わせた。

『りん。』
「…花怜さま…寂しいよ。」
『私も寂しいよ。』

りんに抱き着かれて、小さな背中を撫でた。
すると、邪見さまと視線が合った。

「わ、わしは寂しくなんかないわい!
清々するわ…!」

邪見さまはそう言うと、そっぽを向いた。
意外と寂しそうにしてくれて、嬉しかった。
私とりんが身体を離すと、殺生丸さまが口を開いた。

「行くのか。」
『はい。』

私は一度目を閉じると、殺生丸さまに精一杯微笑んだ。
傍で眠った時の温もりが忘れられない。

『ずっと考えていました。』

殺生丸さまは私の目を真っ直ぐに見つめている。
私は導き出した答えを口にした。

『戻って来ても、宜しいですか。』

りんが私を見上げながら、目を見開いた。
殺生丸さまは普段通りの物静かな声で言った。

「用が済んだら、戻って来い。」

胸が温かな気持ちで一杯になった。
また、あなたの傍にいられる。

『はい。』

やったー!と叫んだりんの声は、とびきり明るかった。
邪見さまは仕方がないとでもいうように、わざとらしく何度も頷いてくれた。
殺生丸さまの金色の眼はとても優しかった。

山の麓への道を辿りながら、何度も振り向いた。
大きく手を振るりんに、何度も応えた。
あの場所にもう一度戻れるのだと思うと、心が晴れやかだった。



2018.4.10




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