見張り

「なんでわしが見張りをせにゃならんのだ…。」

このわし――邪見はぶつぶつと小言を繰り返していた。
川の浅瀬で水浴びをしているであろう人間の小娘二人。
わしは殺生丸さまに言いつけられ、妖怪や野党共がいないかを付近で見張る事となった。
見張ると言っても、此処から二人の声は微かにしか聞こえない。

「殺生丸さまも、人間の小娘二人を連れ歩くとは…。」

しかし、花怜に助けられたのは事実だ。
もしあの時、りんとわしの二人だけだったら――わしは今この世にいないかもしれない。
いいや、きっと殺生丸さまが助けてくれたに違いない。
それにあの小娘二人がいなくとも、殺生丸さまとわしなら難なくやっていけるのだ。

『きゃあ、りんったら!』
「あはは!」

微かに二人の声が聞こえる。
水浴びの最中なのだろう。
嗚呼…もしや花怜は今、全裸なのではないか?
認めるのは悔しいが、花怜は格別に美しい。
本当に人間なのかと疑う程に、そんじょ其処らの人間とは比較にならない程に。
その花怜が水浴びをしている…。
わしは鼻の下が伸びそうになり、身体が無意識に浅瀬の方向へと向いた。
しかし慌てて我に返り、独りで踏ん反り返った。

「わしの阿呆!
この邪見、美女の裸を見たいなどとは断じて思わん!」
「邪見。」
「……ギクッ。」

声がした背後を恐る恐る振り返ると、威圧的にわしを見下げる殺生丸さまのお姿があった。
普段よりも一層恐ろしく見える。
わしの身体はガクガクと震えた。

「せせせせっしょうまるさま…。」

次の瞬間には、ぼこぼこに殴られていた。



2018.3.5




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