存在
―――こうやって一緒に過ごしていると、心が安らぎます。
私の肩に凭れる花怜の温もりを感じながら、花怜の台詞を思い出す。
心が安らぐのは私も同じだ。
花怜を傍に置いておきたい。
犬夜叉や奈落に対する憎悪を癒すような、居心地の良さを手離したくはない。
―――殺生丸さま。
その透明感のある声で、もっと名を呼んで欲しい。
普段はりんの隣で眠る花怜が、私の隣で眠るのは初めてだ。
顔を覗き込めば、無邪気な寝顔が間近に見えた。
端整な顔立ち、きめ細やかな肌。
もし左腕があれば、その頬に触れていただろうか。
不意に花怜が目を開けた。
『殺生丸さま…。』
「…花怜。」
『おやすみな…さ…。』
花怜は呆気なく目を閉じ、規則正しい寝息を立て始めた。
夢だとでも思ったのだろうか。
もしくは、寝惚けていたのかもしれない。
もう一度引き留めれば、花怜は何と応えるだろうか。
2018.4.3
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