初々しいお誘い

次のターゲットの情報収集に向かった雅とデイダラは、サソリと一旦別れた後、白鳥型粘土で空の旅をしていた。
雅の情報収集法は主に潜入だ。
氷化して誰にも気付かれずに移動し、保管されている禁書等の巻物を盗み見る事が多い。
時には、美味しそうな食べ物を盗んで腹ごしらえをしたり、金目の物があれば貰っていく。

「次のターゲットはどんな奴なんだ?」
「私の一族の売買を仲介した人間です。
忍ではありませんが、闇金融組織を指揮する賞金首です」
「なら護衛の忍を傍につけてるかもしれねーな」

きっと優秀な忍を護衛につけているだろう。
それでも今回はデイダラがいるし、雅は何も問題ないと思っていた。
角都から警告されたように、もう戦闘で安易に動揺するつもりはない。
心を揺さ振られないように、暗殺の際は氷のように冷たくなろうと心に決めていた。

「ところでデイダラ」
「うん?」
「ずっとぎゅっとしていますね」
「ウザいくらいぎゅってするって言っただろ?」

二人は腰を下ろしているが、デイダラが雅を背後から抱き竦めていた。
雅はデイダラの腕に手を添えながら、照れ臭そうに微笑んだ。

「雅、身体は大丈夫か?」
「身体?」
「夜、結構激しくしちまっただろ」
「あ…」

デイダラは夜の情交の話をしているのだ。
最後の方はデイダラも遠慮なしに突き上げたし、生娘の証を突き破られた雅は出血していた。
色々と思い出した二人は顔が熱くなった。

「も、問題ありません」
「そ、そうか」
「あの…」

雅は言い淀んだ。
デイダラは急かす事なく、雅の台詞の続きを待った。

「…また…してくださいね」
「ああ、分かっ……うん?!」

デイダラは幸せな目眩がした。
これは雅からのお誘いだと解釈していいのだろうか。
二人きりの今夜は一体どのような夜になるだろうか。
今から既に期待してしまう。

「あー、オイラの強靭な精神力はどっか行っちまったぜ…」
「でも優しくしてくれましたね」

それはその強靭な精神力とやらがあったからではないだろうか、と雅は思う。
がむしゃらに抱くのではなく、段取りを踏むようにゆっくりと時間をかけて抱いてくれた。
幾度もこちらの様子を伺ってくれた。

「次は…その…もう少し上手く出来ると思うので、私に遠慮しないでくださいね」

雅はデイダラの顔を見ずに、真っ直ぐ前を向いたままだ。
赤い顔を見られたくない。
すると、デイダラに耳元で囁くように言われた。

「あんまり可愛い事言うなよ。
此処で抱きたくなるだろ、うん」
「っ…」

雅はデイダラの低過ぎない声に胸が高鳴ったが、その次には押し倒されていた。
その衝撃で白鳥型粘土が左右に大きく揺れた。
デイダラは戸惑う雅の唇に噛み付くような口付けをした。
抵抗されるかと思ったが、雅は目を閉じて応えてくれた。
不意にデイダラの長い前髪が風に揺られ、二人の唇の間に入り込んだ。
デイダラは唇を離し、前髪を払った。

「すまねえ…」
「…いえ」

雅はデイダラのスコープのある左頬に手を滑らせながら、そっと前髪を退けた。
まだ欲しい。
デイダラの口付けがもっと欲しい。

「邪魔だな…オイラの前髪」
「私は好きですよ」

雅が優しく目を細めたのを合図に、口付けが再び始まった。
目的地を通り過ぎても、二人は唇を求め合っていた。



2018.7.28




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