生き残りの男-2

二人は囲炉裏のある部屋に通され、畑から採れた野菜をたっぷり使った夕食を出して貰った。
自家製の漬物がデイダラの口に合った。
なるべく無駄口を叩かないようにと気遣っていたデイダラだが、率直な感想を口にした。

「美味い、うん」
「それは何よりだ。
独り身が長いせいかもしれんな」
「叔父上様はお料理上手ですからね」

二十年前に里抜けしたというこの男は、ずっとこの平屋に潜伏している独り身だ。
雅は里抜けした当時、この男が此処に潜伏しているという情報を同胞から教えて貰った。
二人は七年の付き合いがあるのだという。
トマト出汁の汁物を上品に啜った雅は、デイダラに言った。

「私に医療忍術を教えてくださったのは叔父上様なんです」
「そうだったのか」

だから雅は叔父上様≠ニ敬称を使っているのだ。
二年前、雅の医療忍術がなければデイダラは死んでいた。
男は小さく笑った。

「雅は簡単な医療忍術しか習得しようとしなかったな」
「難しい専門知識は不要です。
私は殺し専門ですから」

傷を塞いだり痛みを取ったりなど、自分が負った傷を治せればそれでいい。
薬の調合といった技術の必要性は感じなかった。
もし仮に薬が必要になっても、今は貰うあてがある。
殺し専門≠ニいう雅の言葉に、男は動じなかった。
この男もまた、雅が暗殺を繰り返しているのを知っているのだ。

「……何人殺った?」
「百人以上です。
残り十人を切りました」

男は箸を止め、腕を組んだ。
あの幼かった雅がこれ程までの忍になるとは、思いもしなかったのだ。

「感謝しているが、心配でもある」
「私は死にませんよ。
全員殺すまで、なんとしても死ねません」
「全員殺したとしても、オイラがお前を死なせねえぞ」

デイダラの声は真剣そのものだった。
雅はデイダラに微笑み、しっかりと頷いた。
しかし、男は険しい表情を崩さなかった。

「全員殺れば、お前には第二の人生が待っている」
「彼と共に行くつもりです」

雅の決意は固かった。
デイダラと共に生きたい。
男は雅の目を見ながら言った。

「お前は一族の為に己の身を犠牲にしてきた。
第二の人生は自分の為に使って欲しい」

第二の人生
デイダラにはこの言葉が鮮烈に印象に残った。



2018.7.28




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