雪女との出逢い-2

深い森に囲まれた小国だとは聞いていたが、想像以上にちっぽけな国だった。
不死コンビと別れてから数時間後、芸術コンビは目的地に到着した。
数人いた監視の忍を起爆粘土で呆気なく始末し、国境の門から堂々と侵入した。

二人は屋台が数軒立ち並ぶ狭い道を歩きながら、古惚けた壁の家々を見渡した。
サソリがヒルコを砂の地表に引きずる不気味な音で、疎らな人々の目線を引いていた。
この国の人々は皆が長い衣を纏い、頭から足元まで隠していた。
まるで、何かに怯えているかのようだ。
そういう二人も笠と黒装束という姿だが。

「顔が見えねえんじゃ探し難いな、うん」
「もうこの国にいるのかすら分からねえからな」

目撃情報とやらが正しいとは限らないし、既に移動している可能性もある。
見つからなかった場合は、小国を爆弾で丸ごと吹き飛ばして終わりだ。
その時、デイダラは不意に横切った人物に意識を集中させた。
振り返らないまま、満足げに言った。

「見つけたぜ、旦那」
「ああ?」

サソリには分からなかったが、デイダラは間近を横切ったから分かった。
凍えるような冷たいチャクラを持った人物が、雪女を彷彿とさせたのだ。

「さっき言った通り、オイラ一人で殺る」
「俺をあまり待たせるなよ」
「分かってるって」

デイダラは一人でくるりと向きを変え、元来た道を悠然と辿り始めた。
目標の人物は黒衣を身に纏い、フードで頭を隠している。
デイダラがその背中を追いながら好戦的な笑みを浮かべた瞬間、その人物は走り出した。

「チッ!」

早々に気付かれてしまったようだ。
振り向く人々など眼中にないまま、デイダラは目的の人物を追って門へと突き進んだ。
監視の忍が爆発で生き絶えている横を通り、森へと入った。
デイダラは笠を片手で支えながら、木から木へと軽快に跳び移った。
更に粘土袋に手を入れ、芸術的だと自負する鳥型の作品を造り出した。
それに跳び乗り、木々の間を上手く通り抜けてゆくと、追っている人物の背中が徐々に大きくなった。
デイダラは追尾タイプの鳥型粘土を複数放ち、その人物へと飛ばした。
片手で印を結び、決まり文句を言った。

「芸術は、爆発だ!」

派手な爆発が起き、森に轟音が響いた。
デイダラは土煙が舞い上がるのを上空から見つめた。
奴は芸術の餌食になっただろうか。
しかし、遅れて気付いた。

「そういえば身体は残せって言われ――」

言葉は続かなかった。
背後に冷たいチャクラを感じたからだ。
鳥の背を蹴り、氷刃で斬り付けられるのを間一髪で回避した。
その人物はフードを片手で支え、顔を見せない。
一方のデイダラは笠が脱げ落ち、身体が落下しながら印を結んだ。

「喝!」

先程まで乗っていた鳥型粘土が爆発し、その衝撃波でデイダラの身体は落下速度を速めた。
地表に難なく着地し、空を見上げた。
暁で培われた直感で分かる。
まだ、終わっていない。

「出てこいよ、うん」

すると、辺り一面が瞬く間に凍り付いた。
木々の木の葉一枚一枚が凍り、地表も氷で覆われた。
そこには幻想的な氷世界が広がっていた。
忍でなければ地表の氷で滑るだろうが、デイダラは足裏のチャクラでバランスを取った。
気温が下がり、まるで真冬のように息が白くなった。

芸術的な光景だな。
爆破してみたいぞ、うん。

粘土袋に手を入れながらも、デイダラは芸術家として胸が浮き立つのを感じた。
どうやら、追っていた人物は雪女で間違いなさそうだ。
すると、目先にある地表の氷が盛り上がり、人の形を造った。
みるみるうちに模様のない黒衣が現れ、目的の人物が姿を現した。
前が見えているのかと疑問に思う程、フードを深々と被っている。

「どうして私を狙うのですか?」
「!」

透明感のある声は聞き心地の良いものだった。
雪女らしき忍は構えも取らずに、ただデイダラを見据えている。

「お前が雪女か?」
「あなたは誰?」

逆に訊き返され、デイダラは鼻で笑った。
今から死ぬ人間に対して、名乗る必要性を感じない。
ただ殺してしまう前に、その顔を見てみたいものだ。




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