強がりな雪女-2

角都と飛段は三階の一室に通され、そこで和食を出して貰った。
四人でテーブルを囲い、箸を進めていた。
ここはサソリが何度か泊まっていた部屋だ。
飽きもせずに傀儡のメンテナンスをしていた姿を、雅は今でも鮮明に思い出せる。
寂しさを振り払うと、玉子焼きを箸で一口サイズに分けた。
零さないように片手を下に添えながら、それをデイダラの口元に運んだ。

「はい」
「うん」

それをぱくりと食べたデイダラは、もぐもぐと口を動かした。
程よい甘さと出汁が効いている玉子焼きは、デイダラ好みの味付けだった。
雅は次の玉子焼きを掴む前に、デイダラの長い前髪を横に優しく流した。
食べさせる時に巻き込まないようにする為だ。
その手付きが優しくて、デイダラは自然と目を閉じた。
デイダラの左目にはスコープがあるが、これも雅に装着して貰ったばかりだ。
デイダラは再び玉子焼きを箸で掴んだ雅に言った。

「慣れたもんだな」
「三食目ですからね。
それにもうこの程度では動じませんよ」

あの情事や露天風呂を経験した後の雅は、食事を食べさせる程度ならへっちゃらだ。
デイダラの口元に玉子焼きを運んでいる時、狂気的な叫び声がした。

「あああァアァァ!!
もうやめろォォ!!」

雅は思わず手を止めると、叫んだ本人を目を瞬かせながら見つめた。
デイダラは特に動揺せず、玉子焼きを自分からぱくりと食べに行った。
オールバックの頭をぐしゃぐしゃに掻き乱しているのは、叫んだ本人である飛段だ。

「オレも雅ちゃんにあーんして欲しいぜチクショーが!!」
「うるせーな、うん」

デイダラは優越感に浸った。
角都は煩い相方に殺気立った。
あの雅にあーんして貰っているデイダラを見るだけでも不快だというのに。

「皆さん落ち着いてください」
「オイラは落ち着いてるぞ」
「落ち着ける訳ねェだろォ!」
「煩い飛段、殺すぞ」

角都と飛段は気付いた事がある。
両腕のないデイダラは雅にこうやって献身的に世話をして貰っている訳だが、それは食事に限った事ではない。
先程まで二人は露天風呂に入っていたらしいが、雅はデイダラを手伝った筈だ。
しかも昼間に風呂に入ったのは、それまでに風呂に入りたくなるような何かをしたからという可能性がある。
それは雅が廊下でダウンしていた理由にも繋がる。
角都は考えるだけで心臓が一つ潰れるかと思ったし、飛段はデイダラを鎌でぶった斬りたくなった。

「食事が終わったら、私は行きますね」
「うん?一人で行くのか?」

話を変えた雅は、デイダラの口元をおしぼりで優しく拭いた。
この食事の後、デイダラの髪を少しだけ切り、それを基に腕を培養してくれる人物の元へと向かうつもりだ。
その人物は、雅の一族の生き残りである医療忍者の男。
雅が叔父上様と呼ぶあの人物だ。

「日付が変わる前には戻ります」
「オイラは着いていっちゃいけねえのか?」
「ここから遠いですし、私一人で全速力で行ってきます」

雅は氷の中を瞬時に移動したり、氷と同化するといった能力を持つ。
作り出した氷の鳥と同化してその中に入り込み、空気抵抗を減らして高速で飛ぶつもりなのだ。

「腕の繋ぎの部分は今日貰えると思います。
角都さんも来てくださいましたし、深夜には右腕だけでもくっ付きますよ」

左腕の培養には数日かかる。
培養が終わった頃に、もう一度男の元へと向かうつもりだ。
とにかく少しでも早く、片腕だけでも復活させたい。

「早く腕をくっ付けて貰わないと、私の精神力がもちません…」
「そ、そうだよな…うん。
悪りーな、迷惑かけて…」

飛段はボサボサになったオールバックを手櫛で戻しもせずに、テーブルに突っ伏した。
その隣の角都は無言で箸を進めた。
雅が出発したら、デイダラを一発殴ってやろう。




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