協力の依頼

見送りの時、不吉な胸騒ぎがした。
デイダラとサソリの背中がとても遠く感じた。
これは物理的なものではなく、心理的なものだと信じたい。

あれから一ヶ月以上が経過した。
雅はデイダラにも角都にも逢えないまま、不安な日々を過ごしていた。
残るターゲットの内の一人は、雨隠れの里の外れにある山小屋に潜伏していた。
雅はサソリの言い付けを守り、しっかりと準備をしてから暗殺に踏み切った。
また一人、無事に殺せた。
ターゲットが住処にしていた小屋を丸ごと凍らせ、粉々に破壊すれば、証拠隠滅だ。
雅がその場を立ち去ろうとした時。
氷の細かな破片が煌めきながら雪のように散る中、懐かしい人物を見た。

「雅」
「ペインさん」
「二年振りといったところか」

雅は冷たい氷が降り止まぬ中、黒衣のフードを脱ぎ、暁のリーダーに丁寧に頭を下げた。
ペインは無表情だが、その目は冷たくはなかった。

「お久し振りです」
「相変わらず礼儀正しいな。
お前があのデイダラと交際しているとは思えないが」
「ご存知でしたか」

雅は静かに微笑んだ。
デイダラの名前を人の口から聞くと、逢いたい気持ちが膨れ上がるのを感じた。

「お前がこの付近にいるとゼツから聞いた」
「此処にターゲットがいるとの情報を教えてくれたのはゼツさんなんです」
「そう聞いている」

ゼツはひょんな時に雅に逢いに来る。
デイダラの近況を知らせてくれるし、ターゲットの情報収集にも力を貸してくれる。
ゼツの話を聞いている限り、デイダラは無事にやっているようだった。

「先週、ゼツさんは私が暗殺したターゲットを食べに来たんです。
お腹が空いていたようで」

賞金首ではなかったから、快く渡した。
ペインは雅の話に僅かに笑った。
雅にとって、ゼツが人間を食べる光景は実に思い出したくないものだが。

「それで、逢いにいらっしゃっただけではないでしょう?
何かお話があるのではないですか?」
「その通りだ。
デイダラとサソリの準備が出来次第、一尾捕獲に乗り出す」

一尾捕獲はデイダラのノルマだ。
一尾は砂隠れの里の風影として里を牽引する立場にある人柱力であり、まだ若い忍だと聞く。

「それを話しに来た」
「それだけですか?」

雅とペインは沈黙したが、ペインが話を切り出した。

「お前のターゲット暗殺が終了次第、本格的にお前の力を借りたい。
暁に加入して貰いたい」

雅は二つ返事で頷けなかった。
ペインは雅に早い返事を強要するつもりはなかった。
考える時間を数日与えるつもりだったのだが、雅の返事はペインの予想以上に早かった。

「私でよろしければ、力を貸します」
「感謝する」

雅はゆっくりと頷いた。
デイダラと共に行くのだから、必然的に暁に力を貸す事になる。

「一つお願いがあります」
「何だ」
「デイダラとサソリさんのコンビに混ぜていただけますか?」
「問題ない」

雅はほっとした。
しかし、数日前のデイダラの台詞が引っかかった。
デイダラは雅が暁に加入するのを反対していたのだ。
この件に関しては、一度デイダラと話をしなければならないようだ。



2018.9.10




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