宴会もどき-2
廊下を挟んで目の前の部屋が、雅とデイダラの二人で借りている部屋だ。
雅はデイダラを部屋まで見送ると言ったが、実はすぐ其処だ。
二人が部屋に入ると、既に敷き布団が敷かれていた。
二人分がぴったりとくっ付けてあるのを見て、デイダラは雅を襲いたくなった。
今夜は雅に散々愛を囁きながら、存分に喘がせてやろうと思っていたのに。
「旦那たちの相手が終わったら、早く戻ってこいよ」
「なるべく早く戻りますね」
「また後でな、うん」
デイダラは部屋の玄関口で雅に短い口付けをした。
しかし、雅は部屋から出ないまま、後ろ手でドアを閉めた。
「うん?雅?」
どうしたのかと目を瞬かせるデイダラに、雅はそっと寄り添った。
デイダラの背中に両腕を回し、酒のせいでほんのり赤くなっている端整な顔を見つめてから、唇を重ねた。
「っ…!」
デイダラは肩がビクッと反応した。
自分は今、少し酔っているのに。
その口付けに煽られ、雅の後頭部を片手で引き寄せた。
夢中になって唇を貪ると、雅も応えてくれた。
雅の舌を厭らしく追い回しながら吐息を零した時、酒の匂いがした。
「畜生、オイラ酒臭えだろ…。
飲むんじゃなかったな…」
「気にしませんから」
雅はデイダラの前髪を手の甲でそっと横に退け、再度自分から口付けた。
酒の匂いがするというだけで口付けを躊躇しないで欲しい。
デイダラの荒々しい口付けが不思議と優しくて、デイダラに縋り付きながら何度も求めた。
息を乱しながら唇を求め合っていると、デイダラが余裕のない声で言った。
「今のオイラは何するか分かんねえぞ…。
向こうに戻らねえのか?」
「何だかデイダラが寂しそうに見えて…」
「寂しそう、か」
デイダラは小さく笑うと、雅をぎゅっと抱き締めた。
「そう思うなら、早く戻ってこいよ」
「行ってきていいんですか?」
「旦那たちと話したいんだろ?」
こうしてメンバーが集まる機会は滅多にないのだ。
雅はデイダラに包まれながら微笑んだ。
二人が抱き合う腕を解いた時、デイダラは最後に雅の額に唇を落とした。
雅は照れ臭そうに言った。
「行ってきます」
「待ってるぜ」
雅はドアを開け、デイダラに手を振ってからそれを閉めた。
雅を見送ったデイダラは座布団に座り、頬杖をつきながらガラス窓の外を見た。
この三日間、雅を何度も抱いた。
借りていた民宿の宿主が雅の知り合いなのもあり、部屋の退出時間も自由に決められた。
結果的に今朝まで連泊した。
それまで時間を気にせずに、何度も肌を重ねた。
雅も応えてくれたし、もっと欲しいと言ってくれた。
「今夜は大人しく寝るか、うん」
連日、雅に無理をさせている。
デイダラが求め過ぎるからだ。
一方のデイダラはピンピンしているが。
明日からまた任務だろうか。
雅と離れる時間が来ると思うと、寂しい。
ずっと一緒にいられたらいいのに。
しかし、それも遠い話ではない。
雅は全てのターゲットを始末すれば、共に行きたいと言ってくれた。
その日まで、根気強く待とう。
2018.8.26
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