親友の本音

今にも空が泣き出しそうな曇りの日曜日。
あたしはお土産を持ち、親友の家のベルを鳴らした。

《はい、桃城です。》

『こんにちは、愛です。』

《愛ちゃん、いらっしゃい。

今開けるわね。》

桃城ママだ。
玄関が開き、見慣れた桃城ママの顔が出迎えてくれた。
相変わらず華代に似たほんわかした雰囲気をしている。
あたしは自然と笑顔になった。

「さあ、入って。」

『お邪魔します。

これ、お土産です。』

「本当に?

何時もありがとうね。」

桃城ママは感激で目をキラキラさせた。
まるで桃先輩みたいだ。
上質な紙袋に入っているのは、デンマークのお土産とあたし手作りのマドレーヌだ。
お土産にはお勧めだと聞いた蜂蜜やチョコレートブラウニーを買ってきた。

「華代なら部屋で待ってるわ。

洗面所は自由に使ってね。」

『はい、ありがとうございます。』

もう何度も訪ねた洗面所で手洗いうがいをし、手に残った水で髪を整えた。
いざ、天使の待つ部屋へ。
深呼吸してからノックをすると、可愛らしい返事が聞こえた。
ドアをそっと開けると、座布団に座って待っている親友がいた。

「愛、いらっしゃい。」

『お邪魔しまーす。』

テーブルを挟んで向かいに座った。
華代の部屋は可愛らしく整理整頓されている。
盲目の華代がぶつからないように、置物は必要最低限だ。

「それで?」

『うん…。』

すると、桃城ママが部屋に入ってきた。
ノックをしなかったのは両手が一杯だったからだ。
言ってくれたら開けるのに、肘でノブを押したらしい。
桃城ママは大きな丸皿と二つのマグカップを器用に持っている。
丸皿にはマドレーヌとチョコレートブラウニーが開けられた状態で載っていた。
華代が取り易いようにする為だ。

「マドレーヌ、一つ貰ったわ。

とても美味しいのね、ありがとう。」

『いえいえ。』

テーブルに丸皿とマグカップが置かれた。
湯気の立つマグカップから紅茶の良い香りがした。

「アールグレイよ。

ゆっくりしていってね。」

『はい、ありがとうございます。』

「お母さん、ありがとう。」

「いいのよ。」

桃城ママは華代に似た笑顔を残し、部屋を後にした。
あたしはチョコレートブラウニーを一つ手に取り、口に入れた。
口溶けが良くて、美味しい。

『チョコレートブラウニーのお土産なの、食べてね。』

「ありがとう。」

華代も笑顔を見せてくれた。
やっぱり華代に逢うと落ち着く。





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