誕生日デート

今日、10月7日は手塚国光の誕生日だ。
15歳になるというけど、もっと年上に見える。
河村先輩のお寿司屋さんで顧問の先生に間違われて、一杯如何かと言われたくらいだ。
それをお兄ちゃんから聞いた時は吹いてしまったけど、あたしは大人っぽい国光が好きだったりする。

『これは初デート。』

「違うだろう。」

水族館の館内にあるフードコートで、二人で丸いテーブルを囲ってアイスクリームを食べている。
ついに来た、水族館。
お昼過ぎに国光が家まで迎えに来てくれて、あたしが乗れるようになった電車で此処まで来た。
色々なお魚たちを観賞する国光を観察していると、幸せでご飯三杯は余裕でいける。
勿論、お魚も観ているけど。

『勉強会はデートじゃないもん。』

ぷんすか拗ねたように言うと、手を伸ばされた。
チョコレート味のソフトクリームのコーンを齧っていると、頭を撫でられた。
冷たいものを食べているのに、顔が熱くなる。

『人…いますけど。』

「ああ、そうだな。」

『今日は国光の誕生日なのに、あたしが喜んで如何するの。』

「俺も喜んでいる。

お前がいるからな。」

あたしが更に真っ赤になる一方で、国光もバニラのソフトクリームをスプーンで掬った。
ソフトクリームを食べる国光なんて、お兄ちゃんや乾先輩は見た事がないんだろうな。
今日も沢山目の保養をしよう。
お互いに食べ終わると、席を立った。
ゴミ箱に飲み物のカップやプラスチックのスプーンを捨て、国光はあたしに手を差し出した。

「行こうか。」

『うん!』

その手をぎゅっと握り、歩き始めた。
広い館内は人が多くて、下手をするとはぐれそうだ。

「もっと俺に寄れ。」

『うん、ありがと。』

国光はあたしに気を配りながら進んでくれる。
些細な優しさが嬉しくて、顔が綻んだ。
すると、水族館で一番大きいという水槽に辿り着いた。
見上げる程に巨大な水槽を悠々と泳ぐお魚たちの目には、あたしたちの姿がどんな風に映っているのかな。
ぼんやりと見つめながら、自然と国光に寄り添っていた。





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