やっとの帰国

U-15国別対抗戦の結果は準優勝だった。
優勝こそ逃したものの、健闘したと思う。
国光と約束した通り、あたしは全勝した。
ただ悪い事に、合宿に参加中のお兄ちゃんには電話が繋がらなかった。
時間が上手く合わなかったんだ。

空港から出ると、久し振りの日本の空気を吸い込んだ。
デンマークよりも寒くないけど、コートは脱がなかった。
朝早くから迎えに来てくれていたお母さんの車を見つけた。

『ただいま!』

「おかえりなさい。」

お母さんの笑顔は相変わらずお兄ちゃんそっくりだ。
あたしは車のトランクに旅行用のトランクを入れてから助手席に乗り込み、シートベルトをした。

「準優勝おめでとう、頑張ったわね。」

『ありがとう、お母さん。

スマホ壊しちゃって、迷惑かけてごめんなさい。』

「いいのよ、水没なんてよくあるしね。」

とりあえず、家に帰ってタブレットで国光に連絡しなきゃ。
お兄ちゃんから国光にスマホの水没を伝えて貰ったから、音信不通の理由は伝わっている。
でも、やっぱり直接連絡したい。
そわそわしながら車内で過ごし、家に到着した途端にタブレットを付けた。
メッセージアプリを起動すると、沢山のメッセージが未読状態だった。

『わ、国光からだ…。

お兄ちゃんと華代からも…。』

お兄ちゃんからの激励のメッセージと、返事がない事を心配するメッセージ。
華代からの着信。
国光のメッセージを見ると、心苦しくなった。

―――――
返信がないが、何かあったのか?
―――――
早く連絡してくれ。
―――――

『うう…ドジでごめんなさい…。』

合宿中の国光は簡単に電話には出られないだろうし、メッセージを送ろう。

―――――
遅くなってごめんなさい!
タブレットから連絡してるけど、今から携帯ショップで代替機を借りてくる!
もう帰国したから、また何時でも連絡してね?
―――――

これでよし。
とにかく、携帯ショップへ行かなくちゃ。
トランクを残してショルダーバッグだけを引っ提げ、部屋を出ようとした時。
バッグの中のタブレットが振動した。
慌ててそれを取り出すと、メッセージアプリからの着信だった。
トランクからイヤホンマイクを引っ張り出し、タブレットに差し込んだ。
耳に装着し、準備完了。
妙に緊張して深呼吸すると、応答した。

『もしもし。』

《もしもし、愛か。》

懐かしく感じる国光の声。
スマホ池ぽちゃの罪悪感が溢れた。

『ごめんね、連絡取れなくて…。』

《いいや、お前が無事で良かった。》

国光が電話をくれたのは嬉しいけど、如何して今電話に出ているんだろう。
合宿はまだ終わっていない筈なのに。

《愛、聞いてくれ。

俺は今から――》

国光が話した内容に、あたしは耳を疑った。



2017.6.27




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