大声で告白

ふにゃふにゃになりながらも部活を無事に終えたあたしは、桜乃ちゃんと一緒に部室を出た。
国光と正門で待ち合わせをしているから、其処まで一緒に行く。

「愛ちゃん、あれ見て…。」

『?』

桜乃ちゃんが指差した方向に、何故かそわそわしている1年トリオがいた。
女子テニス部のコート近くまで来て、何をしているんだろう。
お目当てはスカートが短い部員…な訳ないか。
桜乃ちゃんはあたしと1年トリオの事情を知っているから、三人に声をかける事なく二人で横を素通りしようとした。
でも、その考えは甘かった。

「カツオ、不二が来た!」

三人の横を通り過ぎる前に堀尾君の声がして、あたしはギクッとした。
まるであたしを待っていたかのような台詞だ。
あたしはなるべく平静を装いながら、笑顔を作った。

『三人共、部活お疲れ様。』

サラサラと手を振り、今度こそ通り過ぎようとした。
でも、それは数歩前に立ち塞がった水野君に阻止された。
水野君の顔は真っ赤だ。

「あの、不二さん、話が…。」

桜乃ちゃんがあたしの隣でおろおろした。
あたしの中にとあるフラグが立ったけど、意外にも取り乱さなかった。

『待ち合わせがあるんだけど――』

「すぐに終わる…。

ほんとにすぐだから、テニスコートの裏に行ってもいいかな。」

堀尾君が桜乃ちゃんの腕を掴み、加藤君と一緒に正門へ走っていった。
桜乃ちゃんは見事に引っ張られ、あたしに心配そうな顔を向けていた。
心配ないという気持ちを込めて、桜乃ちゃんに頷いた。
桜乃ちゃんたちを見送ってから水野君に頷き、人が通り難いテニスコート裏へと向かった。
人が遠巻きに見えるけど、話し声は聞こえないだろう。
国光を待たせてしまうけど、後から説明したら分かってくれるだろうだなんて身勝手な事を考えた。
それに、長居はしないつもりだ。

「不二さん、急にごめんね。」

『いいよ。』

水野君と確実に距離を取りながら、あたしはやっぱり冷静だった。

「気付かれてると思うけど…ぼ、僕……」

真っ赤な顔をしている水野君は、風に消えてしまいそうな声で話している。
手を震わせながら、突拍子もなく声を張り上げて言った。

「不二さんの事が好きなんだ!!」

余りの大声であたしはびっくりしてしまい、目を丸くした。
肩が跳ねそうになった。

―――好きになる事って悪い事じゃないと思うの。

―――好きっていう気持ちを大切にして欲しいな。

桜乃ちゃんに言ったばかりの台詞が思い出される。
今思い返せば、あたしは何様のつもりだったんだろう。
でも、本当にそう思っているし、気持ちに応えられなくて申し訳ないと思っているのも事実だ。

「気持ちだけでも伝え――」

水野君の台詞が不自然に途切れた。
目を丸くしてあたしの背後を見ているから、あたしも振り返ってみた。

『国光…。』

コートのフェンスの角から現れたのは、あたしの恋人だった。





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