ドキドキのサバイバル合宿 1-1 (アンケリク)

青春学園高等部3年生の夏。
俺は男子テニス部を部長として率いている。
同じ高校に通う恋人の愛は、助っ人として各高校男子テニス部の合同合宿に参加した。
突如として突き付けられたサバイバル合宿を不安に思わないだろうか。
そのような心配は無用だった。

『無人島キターっ!』

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
愛が普段からメッセージで使用する顔文字が頭に浮かんだが、今は如何でもいい。
無人島に漂流した当日、真夏の空の下。
全員が水着になって海に出ていた。
注目の的になっているのは、黒に近い紺色の水着を着てはしゃぐ愛だ。
オフショルダーで肩が見えているし、テニスで鍛えられたウエストは細身。
ミニスカートを履いているように見えるが、ビキニでフリルの付いた水着だ。
まだ水着の中では露出が少ない方だと思っていいのかもしれないが、恋人である俺は気が気ではない。
この無人島にいる人間の大部分は男だ。

「はしゃぐなよ愛、転けるぞ!」

『お兄ちゃんこそ!』

水遊びに付き合っているのは、兄の裕太君と桃城だ。
同学年のこの二人は妹二人が親友であり、意外にも話が合うらしい。
愛は持参していた水鉄砲で裕太君の頭を狙い、裕太君が擽ったそうに笑っている。
俺は愛がドジをしないか如何かが心配で、遠巻きに見守っている。
すると、誰かが俺の隣に立った。

「相変わらず良い女じゃねぇか、アーン?」

「…跡部。」

跡部が毅然として腰に手を当て、俺の恋人に視線を送っていた。
テニス界で名の知られた不二愛と俺が交際している、というのは有名な話らしい。
跡部もそれを知る一人だ。
他にも愛の友人である女子が砂浜にいるのだが、やはり愛が人一倍輝いていた。
夏だというのに、愛は日焼け知らずで、その肌は白く透明感がある。
跡部が更に追い討ちをかけてきた。

「顔もスタイルも抜群だ。

野郎共が皆して鼻の下伸ばしてやがるぜ?」

「……。」

「テニスも勉強も出来るんだろ?

大層モテるんだろうな。」

「……。」

全くもって否定出来ない。
間違っていないからだ。

「特に今回の合宿はサバイバルだからな、しっかり目を光らせておけよ。」

リーダーシップ性のある跡部なりの忠告だろう。
今回の合宿は山側と海側に別れ、俺と跡部は其々のリーダーとしてメンバーを率いる事になっている。
何かと二人で報告し合う機会は多いだろう。

「俺も混ぜろダーネ!」

『出ましたね、ダーネ星人!

討伐します!』

何時の間にか、水遊びには越前とルドルフの柳沢が加わっている。
すると、愛が俺の視線に遅くも気付いた。
注目されている事など露知らず、此方に向かって走ってきた。

『ねぇ、国光。』

「?」

愛は海水の雫が頬から滴り、太陽の光で煌めいている。
つい見惚れていると、好戦的に微笑む愛が背中に隠していた水鉄砲を至近距離で俺の顔に向けた。
俺は反射的に手を伸ばし、愛の腕を掴んだ。
その身体を軽々と反転させると、標的を変えた水鉄砲が遠くにいる桃城の背中を撃った。

「うおっ、何するんスか二人共!」

俺に水鉄砲が当たらなかった愛は呆気に取られていたが、背中を痒そうにする桃城を見て愉快に笑い始めた。
その両肩には俺の手が置いてある。
俺のものだ、と周囲に見せつけておこうと思った。

「よお、良い女。」

『跡部さん。』

「相変わらず手塚を困らせてるじゃねぇか。」

『ありがとうございます。』

下心のない跡部に、愛は何故か感謝を告げて微笑んだ。
それに対して悪い気のしない跡部は、軽く笑って返した。
愛は俺から離れると、手を振って遊びに戻った。
すると、跡部が俺にとどめを刺した。

「夜は二人で寝たいだろ?

そういう部屋割りにしてやるよ。」

「…!」

眉を寄せて跡部の顔を見るが、跡部は笑うだけだ。
愛と二人だけで一夜を過ごした事はない。
もし跡部の言う通りになれば、如何なるだろうか。
その考えを振り払い、水遊びをする愛を見守る事に集中した。





page 1/2

[ backtop ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -