見つかった電話-2

部活終了後。
制服に着替え終わったあたしは、部室のロッカーに学校用のテニスシューズを片付けていた。
すると、テニスバッグの外ポケットに入れてあったスマホが鳴った。
さり気なく手に取り、画面を覗いた。

あれ、こんな時間に桃先輩から電話?

男子テニス部も部活が終わったばかりなのに、如何したんだろう。
隣のロッカーを使っている桜乃ちゃんが首を傾げた。

「如何したの?」

『ちょっと電話してくる!』

「うん、着替え終わったら行くね。」

あたしはテニスバッグを引っ掴み、部室を出た。
すぐに通話に応じると、元気な声がした。

《よっ、愛ちゃん!》

『びっくりしましたよ、如何したんですか?』

周りから人が遠いのを確認しながら、木の下に移動した。
華代に関する話題だろうから、桃先輩との会話には慎重になる。

《今日、うちに来れねぇか?

華代が元気なくてさ、愛ちゃんに逢って欲しいんだ。》

『また急ですね、でもいいですよ。』

《ほんとか?!

サンキューな!》

親友の為なら、たとえ部活終わりでも何のその!
テニススクールに連絡して、コートの予約をキャンセルするだけだ。

《何時でも待ってるぜ。》

『分かりました、今から向かいますね。

それじゃあ!』

今から華代に逢えると思うと、部活の疲れも吹っ飛ぶ。
何か弾いて貰おうかな。
ふふっと笑ってスマホをポケットに入れようとした、その時。

「誰と逢うんだ?」

『?!!』

スマホが手から滑り落ちそうになった。
バッと振り向くと、手塚先輩がいた。
何時ものポーカーフェイスで腕を組んでいる。
こうやって二人になるのはあの変人撃退の日以来だ。
本来は嬉しい筈なのに、今は喜べない。

『何時の間に…。』

「桃城だろう。」

『へ?!』

予言者お兄ちゃんじゃあるまいし、何故電話の相手が分かるんだろう。
冷や汗を掻くあたしの前に立つ手塚先輩は身長が高い。

『も、も、桃…?

何の話でしょうか…?』

「不二妹と呼ぶように言っているのを聞いた。」

『え?』

何時の話だ?
桃先輩と最後に直接話したのは、手塚先輩と付き合う前だった気がする。
確かに不二妹と呼ぶように言った記憶がある。
でも今は兎に角、少し苛立ち気味の恋人様にどのように説明すればいいのかを考えなければ。

「桃城とは如何いった関係だ?」

嗚呼、ピンチだ。



2016.12.4




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