兄さんはさ、きっと誰も信用したりなんかしなかったよ。

グラグラ揺れる小さな足場の上で兄さんは独りだった。
近くに壁はあったけど、それは兄さんの体重を受け止めずに崩れ落ちてしまう。
兄さんは、壁が崩れるのも、自分が落ちるのも嫌だった。だから兄さんはいつも独りだった。

兄さんの周りには、いくつも足場があって、その上にはたくさん人が立っている。数人で立っていることもあれば、一人で立っていることもある。
その中の誰かが、足場から落ちそうになる。そうすると、他の誰かが手を差し伸べて支える。そうして支えられた誰かも、誰かを支えて、足場は繋がり、人は支え合ってその上に立つ。
でも誰かに手を差し伸べはしても、誰の手もとらなかった兄さんの足場は、誰のものとも繋がらなかった。
だから、兄さんはいつも独りだった。

でも、兄さんが一人であることに誰も気づかなかった。
誰にでも手を差し伸べる兄さんの足場は、それと同じぐらい誰にでも近かったんだ。

思えば、不器用な人だった。
誰にでも手をさしのべるくせに、自分に差し伸べられる手にどれぐらい力を込めても崩れないのかが、壊れないのかが、分からなかったんだろうな。


バカな人だ。


兄さんの話

20120130

……………………

大好きな大好きな兄さんの話。




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