5

フ「!?」

約束の5分が経ったとき、突然落雷が起きた。

ロビーの近くの塀に身を隠していたため、かなり驚いた。

フ「…燿?」

身を隠している場所からは見えないが、わらわらと慌てた警備員たちが出てくる。

陽動は上手くいっているようだ。

A「なんだ?何が起きた!?監視カメラも監視ロボも全部やられたぞ!」

今の落雷は…燿が監視システムを麻痺させるためのだったのか…。

というか、なんで落雷を自在に起こせるんだろう。

…考えるだけ無駄か…。

フレデリカは軽く息をつき、人気のなくなったロビーに滑りこんだ。

いくら燿の方に行っているとはいえ、全員が全員いなくなるわけじゃない。

警戒は怠ってはならないのだ。

身を低くし、駆け抜ける。

B「!?」

鉢合わせた社員が、声をあげる前に胸ぐらをつかんで引き倒し流れるように手刀を叩き込む。

うぐ、とも、ぐえ、ともとれぬ声をあげて社員は動かなくなる。

ひょい、と抱えて空き部屋に放り込みバタンと閉めて駆け出す。

エレベーターは使えない。

カメラに写っては燿の陽動の意味がなくなる。

長い廊下を走っていると、向こうの方から声が聞こえた。

咄嗟に柱に身を隠す。

こちらへやってくる。

C「表の監視機能が全部やられただと!?」

D「一体どうやって…」

E「そんなことよりも…」

フレデリカはそっと自分の銃を見る。

サイレンサーはついている、大丈夫だ。

フレデリカは機会を伺い、ぱっと飛び出した。

D「!?な、なんだ…おま」

驚きの言葉は、パシュッという小さな音に消されて終いまで紡がれることなく消えた。

引き金を引くと同時に二人の身体が跳ね飛ぶ。

それを見た残り一人の顔がみるみる蒼白になっていく。

フ「…麻酔弾だから死なない。…でも」

そして別の銃、愛用のマグナムをホルスターから抜き額に突きつける。

フ「こっちは…実弾」

途端にガクガクと震えだす社員に、フレデリカはさらに詰め寄る。

フ「…質問に答えて。幹部たちはどこ?」

社員はガクガクしながらも頑なに口を閉ざしている。

フ「答えたくない?…そう、なら」

フレデリカは見せつけるように安全装置を解除し、弾を装填する。

装填のときに弾丸がちらりと見えたのか、社員の顔からさらに血の気が引いていく。

ブルブル震える唇が、鯉のように数回開け閉めされたのち、かすれた声が紡がれた。

C「…さ、さい、最上階…の、奥の…へや…」

フ「…そう」

額から銃を退けてやると、その場に崩れ落ちた。

気絶したのか。

フレデリカは三人の体を空き部屋に放り込むと、そのうちの一人から上着とIDを拝借するとバタンと閉める。

そして、また駆け出した。

あの三人が目を覚ますのは時間の問題。

迅速に行動しないと、燿の負担も大きくなる。

柱や空き部屋で社員たちをやり過ごしながら、少しずつ上の階に行く。

エレベーターでは行かない。

エレベーターなんて自ら袋のネズミになるようなものだ。

ダダダと階段を駆け上がる。

最上階まで、あと半分。


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