燿「今度の世界って、初めての世界なんでしょ!ワクテカしちゃう!お金稼げないかナー」
十「私はあんたが羨ましいよ」
神「下らん茶番は私のいない場所でやれ」
十燿「「なんだと!?」」
双「みんな、怪我しないでね」
斎「大丈夫。なんとかなるわ」
捺「…(コクッ)。…きっと、大丈夫」
七隊たちは、それぞれ喧嘩したり士気を高めたりしていた。
破壊者(ブレイカー)の襲来を察知した刹那により、出撃命令が出たのだ。
刹「…転送します」
そして転送装置が起動され、七隊たちは破壊者のいる世界に飛ばされた…はずだった。
十「……」
燿「……」
十「…いなく、ないか?」
破壊者は通常大群を成して襲来する。
だが、眼前に広がる砂地には一切姿はなく、気配すら感じない。
双「ど、どうなってるのかな?」
捺「……(困惑)」
斎「一度落ち着きましょう。慌てても仕方ないわ」
斎希の言葉に、七隊たちは相談すべく十六夜の周りに集まった。
しかし、神流だけが動かない。
なにか…嫌な気配を感じたのだ。
それはどんどん強くなる。
そして、それはぴたりと止まると……。
こちらに向かって猛スピードで近付いてきた。
神「っ避けろ!」
神流の鋭い声と同時に、足元の地面が隆起してなにかが飛び出した。
その凄まじい反動で、七隊たちはそれぞれ吹っ飛ばされた。
しかし、そこは七隊。
戦闘には慣れているし、受け身も取れる。
それぞれ地面に着地した。
リーダーの十六夜は、即座に脳内通信で安否確認をする。
―皆!無事!?―
―いってー…ま、こんぐらいは余裕余裕―
―十六夜ちゃん、私は平気だよ!―
―私も。問題ないわ―
―…捺波、OK…―
―…この程度、いなせて当然だろう―
―良かった、みんな無事だね。とりあえず私のとこで合流しよう―
幸い、それほど遠くに飛ばされたものはおらず、苦もなく合流することができた。
双「みんな、怪我はない?」
十「…平気っぽいね。…さて、呼ばれ○飛び出○ジャジャジャジャー○の正体はなにかな?」
燿「呼んでないけどね。てか古い」
舞い上がった砂ぼこりが収まり、少しずつ姿形が見えてきた。
完全に姿が見えたとき、十六夜も燿も軽口を叩く余裕を失った。
燿「っうっ!?」
双「…なに、あれ…!」
皆が目を疑った。
砂ぼこりから現れたのは、生物と呼ぶにはあまりにもおぞましいもの。
人間の頭、胴はある。
しかしその胴から、蜘蛛のような8本の脚が生えているのだ。
ブレイカーとは明らかに別のなにかだった。
捺「……っ」
神「…気色悪い…」
斎「…これが…生き物だというの……?」
十「…やるしかない。全員臨戦態勢を取れ!」
十六夜の号令に、それぞれ身構えた。
十六夜は炎を纏い、燿は手を剣に変える。
斎希は日本刀を構え、神流の周りには氷の刃が並ぶ。
双葉は回復の準備を整え、捺波は優雅に水をたゆたわせた。
蜘蛛人間は、ぐりんっと首を一回転させると七隊たちを認めた。
そして、形容しがたき咆哮をあげながら突進してきた。
十「来るよ!」
十六夜の一声で、四方に散った七隊たちは見事な連携攻撃を始めた。
十六夜と燿が左右から炎を纏ったライダーキックと雷を帯びた斬撃をかまし、よろけたところに続けざまに神流の氷柱、捺波の水の刃が飛んできた。
そして斎希がバリアで四方を固め、身動きが取れなくなったところで燿が上空から光の速さで剣に変えた足で蜘蛛人間の身体を貫く。
たまらず倒れた蜘蛛人間に、燿が得意そうに言った。
燿「なんだー、見た目だけで中身はない感じ?楽勝だったんだけど」
神「…油断するな、雷。…それだからお前は詰めが甘いんだ」
燿「なんだって…?」
双「け、喧嘩しないでー!」
燿「双葉がそう言うなら仕方ないなー!」(ギューッ)
斎「良かった…倒せたようね」
捺「……(コクッ)」
安堵する七隊たちだが、別の気配を感じた。
十「…この世界の住人かな」
神「…さあな」
燿「…行くしかないかー…」
斎「油断しないように行きましょう」
燿「…頼むから異形はやめてくれー…」
―――――――――――
シノミヤは、セカンドタイプと交戦する正体不明の存在にどうすべきか決めあぐねていた。
探知されたセカンドタイプは一体。
一体なら楽勝だろうと思っていたというのに、来てみれば謎の先客。
シ「なんなんだよ、あいつら…」
何もないところから氷やら炎やら水やらを出している。
人間でないことは確かだが…。
見事な連携プレーで、瞬く間にセカンドタイプを撃破する様を見て、シノミヤは舌打ちをすると、ヘッドフォン型の通信機で羽柴に愚痴混じりの報告をした。
シ「…所長、なんか変な先客がいて勝手にセカンドタイプぶっ殺されたんだけど」
羽「ええ、わかっています。何者ですか?彼らは」
シ「俺が知るかよ。どうすんだ、所長」
…ワケのわからない奴らにはとっとと消えてほしい。
あわよくば…とライフルのスコープを覗きながら物騒なことを考えていた。
そのとき。
ふっと姿が消えた。
シ「!?」
?「…何をしている」
背筋が凍った。
数百メートル先にいたはずなのに、気が付いたら姿が消えて後ろから声がしたのだ。
反射的にライフルを鈍器にして振り返りざま振り下ろした。
ガッという衝撃が伝わり、ライフルは中途半端なところで止まった。
見れば恐ろしく長い銀髪の少女が腕でライフルを受け止めている。
男で、しかも訓練しているのだから相当の力だったはずなのだが、少女は痛がるどころか眉ひとつ動かさない。
羽「シノミヤ君?どうしました?シノミヤ君?」
ヘッドフォンから聞こえる羽柴の問いにも応答できず、少女とシノミヤはただにらみあった。
少しすると、
?「ちょ、ちょっと!」
と赤髪の少女が現れ、二人の間に割って入った。
銀髪の少女は黙って後ずさる。
見れば腕が真っ赤に腫れていた。
そこに、さらに黒髪の着物の女性、茶髪の少女、金髪の女性、包帯と眼帯を付けた水色髪の少女が現れた。
次から次へと…めんどくせぇ…。
シノミヤは内心ぼやいた。
?「神流ちゃん、腕見せて」
茶髪に言われ、銀髪は痛々しいほど真っ赤な腕を、何も言わずに差し出した。
?「ねえ、この世界の人でしょ?」
赤髪に話しかけられ、シノミヤは顔をしかめつつも頷く。
ノ「うぅぅっ!」
どこからか現れたノアが飛びかかった。
?「うわっ…」
なんとか防いだ金髪を見て、シノミヤは唖然とした。
金髪の手から先が剣となっていたのだ。
ノアが繰り出す激しい攻撃を負けじと受ける金髪。
…やっぱこいつら、人間じゃねぇ…。
羽「シノミヤ君!」
羽柴の声で我に返る。
そういえば、ずっと呼ばれていた気がする。
シ「…こいつら、敵意はねぇみてーだけど」
適当な報告をした。
羽「そうですか、今はセカンドタイプの反応はありません。彼女らを連れて戻ってください」
シ「はぁ!?わけのわかんねーやつを本部に連れ込むのかよ!」
羽「仕方ないでしょう。つべこべ言わずに早くしてください」
強引な指令にイラつきつつ、まだ金髪と交戦していたノアに腕で大きくバッテンを作った。
ノアはそれを見て、白樺をしまい攻撃の手を止める。
?「はぁ…」
ノ「…う?」
心配げなノアの頭を撫でると、通信機を取って声をあげた。
シ「おい、お前ら!うちの所長が呼んでんだ。付いてこい」
?「…不遜な奴だな」
シ「ああ゙!?」
?「神流。…伺います」
シ「…ち、めんどくせぇ…」
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