当然といえば当然なのだけれど…この世界に住む所がなかった私は、あの日からガーネット様の善意でアレクサンドリア城の客室に泊めてもらっていた。

そして3日間、何をするでもなく…ただ色々な事に考えを巡らせている。

そんな私とは違って忙しい旅の仲間達は、旅が終わった後それぞれの在るべき場所へと帰って行った。

ジタン様とエーコ様はリンドブルムへ…フライヤ様はブルメシアへ。そしてビビ様は、黒魔道士の村へ。この城の料理長になったというクイナ様と、当然ながらガーネット様とスタイナー様はこの城にいる。

サラマンダー様は…よくわからないけれど黙ってどこかへ行ってしまった。昨日の式典にはちらとその姿を見せてくれたけれど、どこにいるのかは知らない。

式典を終えたあと、再び<いつか帰るところ>に帰って行く皆様を…私は見送るしか出来なかった。

「………。」

大きく伸びをして朝の空気を吸い込む。眩しい陽光に照らされる街並み…とりとめもなく考えている間に、世界は少しずつ目覚めていた様だ。

「…おはようございます、アレクサンドリア。」

また、独り言の様に呟く。

開けた窓をそのままに、私はおろしっぱなしだった髪を纏めにかかった。



「……ミノン、起きてる?」

身支度を整え終えた頃、扉越しに聞き慣れた涼やかな声がした。

「…ガーネット様!」

凛とした気配…それに似合う佇まい。言葉遣いは以前のものだし、身に纏っているのは簡素なワンピースだけれど…扉の向こうに立っていたのはこの国の女王だった。

「おはよう、ミノン。」

「お、おはようございます…どうなさいました?」

「ねえ、一緒にご飯食べない?」

「……え?」

「…大丈夫よ、今日はみんないないから。」

私の戸惑いを一瞬で見抜いたのか、安心させる様な口調でガーネット様が言う。

「あなたと少しお話がしたくて。…別に食べなくても良いわ、一緒に来てはくれないかしら?」

「はい、喜んで。」

部屋を出て、控えていた護衛の兵に会釈する。戸惑ったのは…[女王様のお食事]にはいつも誰かしら貴族が共にいると聞いていたからだ。ガーネット様と一緒に食事をとるだけならば、何の躊躇いもなかった。

「ありがとう。じゃあ、行きましょう。」

「はい。」



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