「咬み殺す」

 チャキリと構えられたトンファーの煌めきとその言葉に、記憶の琴線が刺激された。
 音の波紋が響くように、じわじわと脳裏に蘇ってきた記憶。

 家庭教師ヒットマンREBORN!

 その単語から連鎖するように、並盛町や沢田綱吉の名前が繋がっていく。
 ストンッと理解に繋がる思考の進行方向に困りながら、目の前で自分に絡んできていた男たちの屍と化す姿を見つめていた。

「君、ぼやぼやしてるんじゃないよ」

 だから絡まれるんだ、と言われる声が右から左に流れてゆく。
 呆然と見上げる私に、いらつきも隠さずにトンファーをどこかにしまっている。

 よく覚えてないが、今蘇った漫画の内容からすれば、咬み殺される直前か、と思い至って慌てて頭を下げた。

「あぁぁ、ありがとうございます!」

 返事は無かったが、怒りの気配は消えていて、そしてそのまま彼は去っていった。



「……はぁ」

 思い出した記憶の中の漫画の場面は家庭教師に来た暗殺者にボスにすると言われること。
 格好良い男の子たちが仲間で、七人いたこと。
 主人公がパン一で走り回っていたことくらいだった。
 だけど、沢田、あの髪型。
 今現在の収まりの悪い天パの自分の髪の毛と並盛小学校の中に他に沢田がいないことを考えると、その漫画の主人公の立場に立っているような……

 そんな結論に達したことが恐怖以外の何ものでも無い。
 だって……

 女の子なのにそんな格好で走り回れるわけが無い!

 何のボスだったか忘れたが、何よりかにより、一番の問題はそこだろう。
 下着だけで!?
 貧相な身体だとはいえ、そんな辱めを受けるくらいだったら死にたい。
 頭の中で、この体に生まれ変わる前の死亡の瞬間と比較し始めてしまう程に――

「――とりあえず帰ろ」

 一日ゆっくり寝て、それからまた考えよう、とベッドへと直行した。





 それから何度か絡まれている所を雲雀さんに助けられた。
 まだ小学生だけど、強い雲雀さんは群れを狩っているらしい。
 何度も遭遇する内に、名前や情報を知った。

「また君かい」
「えぇ、またなんです」

 申し訳無くなるが、別にわざと何かをしている訳では無い。

「群れを引き寄せるフェロモンでも出してるんじゃないの?」
「そんなっ!」

 そんなもの存在しないと互いに分かっていることだが、あまりにも回数が多いと言いたいようだ。

「またご迷惑おかけします」

 苦笑いと共に頭を下げる。

「仕方ないよね」

 それで済ませてくれるなんて、初めて会った頃は知らなかった。
 ピンチを救ってくれる、王子様では無いが、乙女心的には大差無い彼が好きになるまで、そう時間はかからなかった。

「もう暗くなるし、行くよ」

 絡まれている内に辺りが赤く染まり始めている。
 また絡まれかねないから、と家まで送ってくれ、母さんに引き止められて一緒に夕食を食べる。

 そんな少しほのぼのとした雲雀さんとの関係は、一応恋人だ。
 髪の色が目立つため、群れの中にいると目に付くらしい。
 その回数が増えて気になっていた、と後で聞いた。


「今日のデザート、食べていって下さいね!」

 初めて作ったけど、うまくいったので、と笑えば、少し眉間に皺が寄った。

「まさかとは思うけど、僕を探してて絡まれたとか言わないよね?」

 笑ってごまかそうとしたら怒られました。

「後で携帯届けるから」

 雲雀さんの連絡先を知っているのなんてあまりいないだろうに、簡単に告げられたのだった。


 下着姿で走り回らされる事態になったら雲雀さんに迷惑かけるな〜、と少し未来が心配になるが、何とかなるだろうか。






きっと一番最初の死ぬ気弾の内容は「死ぬ前に雲雀さんに会いたかったな」でFA!
んで、とっ始めっから下着姿で!!な事態に陥ることでしょう。
これだと、ツナ成り代わりで雲雀夢、だと思うんだ。
でも、その解釈で間違って無いか、誰かお答え願えると助かりますです……
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