――うたた寝から目覚めたら、知らない教室にいた。

 頭がコクリッと動いた少女は、頭を数度振って、それから黒板を見据えた。
 その視線は黒板ではなく、その前に立つ教師へと固定されて、瞳が揺れた。

 ――知らない、人。

 自身の教科担任である教師とは違う人物の姿に、どういうことだ? と瞳が揺れたのだ。
 ふっと、視線を周りに巡らす少女は、クラス内に知っている人の姿が一つも無いことに心臓がうるさく鳴り響き始めた。
 苦しい、と胸を押さえ、これはどういうことなの!? と叫びたくなる。
 泣きそうになったその瞳は、誰でもいいから助けてほしい、と訴えているようだ。

 ――!?

 ゆらゆらと動く視線が、一ヶ所で止まってしまう。
 見覚えがあるのか、その人物を観察した後、先程通り過ぎた人物へと視線を動かし、しばし観察する。

 ――なんで!? なんで!!?

 パニックを起こしたのか、そんな零れそうな涙をどうにか堪えながら、もう一人の人物に視線を止める。
 そして、動かした視線をまた別の人物に。
 それを数度繰り返した後、最初に止まった人物へと再び視線を戻した。

 ――沢田、綱吉……

 最初に見た時はわからなかったが見覚えのあった人物と、視線が止まってしまった人物と、それ以外にも気付いてから見直せば見覚えがある人物。
 自身の知っている漫画・アニメの登場人物たちと一致する人物たちの姿に、少女は机に突っ伏して涙を零しそうになった時。

「今日はここまでだ」

 教壇の上の教師が宣言すると同時にチャイムが鳴り響き、日直が号令をかけ始める。
 それにのろのろと従いつつ、逃げたいと思う気持ちを抑えながら着席した。

 ――ここは、どこ? 私はどうしてここにいる、の?

 紛れ込んだとしか思えない事態に、少女――上田彩耶は伏した頭を腕に押し付け、そっと涙を零した。


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