「異世界トリップしたって、どういうこと!?」

 そう、彼女がどうにか尋ねられたのは、私が昼食を終えた後だった。
 硬直してしまっているなぁ、このまま待つのも暇だなぁと思った私は、先に昼食食べちゃおう、と持って来ていたお弁当をペロリと平らげ、綺麗に仕舞いこんだ直後であった。

「読んで字の如く。私は、いわゆる若返りトリップってやつを経験したのですよ」

 事務系やってる社会人だったからねぇ、私。
 社会人になってからサイト運営始めたとか、遅すぎだろうけどさ……

「若返り!?」
「ん、まぁ、それが一番分かるのはアレだよね」

 かてきょーヒットマン。

 そう、題名の一部を口にして見せれば、彩耶ちゃんはそのまま声には出さずにリボーンと返してくれた。

「そ。私はそれの二次創作サイト運営者だった」
「ぇ?」
「でも、こっち来たらそれ全部消えてるしねぇ……」

 書きかけの携帯に残ってた小説すらサーッパリ。

「まぁ、残ってたとしても、困るよね、見られる心配あるし」
「……それもそうですね」

 何とか相槌を打った彩耶ちゃんは、唾を飲み込み、こちらを見た。

「じゃあ、ホントに?」

 一緒なの? それとも仲間なの?
 どちらだとしても、その問いには。

「えぇ、そういうこと」

 肯定の返事を返すしか無いのだ。




「でもさー、原作三年後だし、高校卒業する頃にはみんな外国でしょ?」
「きっとそうだろうねぇ」
「それまで1年ちょっと! 頑張って関わり持たないように気をつけよう! って私は思ったんだけど、彩耶ちゃんはどう思う?」
「夢小説定番としては、情報チマチマ出したりして関わること多いですよね」

 でも、原作を知っているというアドバンテージ、もう何も無いですよね。

「変に近付いたら死人に口無し、なんていう結末迎えそうですし……」
「だよね! 彩耶ちゃんが仲良くなりたい派じゃなくって良かった!」

 昨日の様子見た限りでは、こっち系統だろうと予想はしていたけれど。
 でも、やっぱり、関わる=命に関わるよね……

「これで、家に元の家族がいなくて、全く知らない人がいたか、それとも身一つで放り投げられた立場だったら違うだろうけど」
「だよね! 私も起こされた時驚いたけど、親は健在だもんね!」

 そう、これで一人見知らぬ世界にいたのなら、金銭問題等発生するから何としてでも関わって、っていう手もある。
 親がいる時点で関わらずに生きていきたい、と思うのが当たり前だろう。

「彩耶ちゃんも、自宅に家族はそのままいたんだ?」
「うん、美佳に送ってもらって帰ったら、全員いた」
「それは良かったね」
「うん……」

 一人きり、よりはいい。
 いくら家族に前の世界での記憶が無かったとしても、それでも家族は家族なのだから。
 それに、こうして出会えた今、私もいる。

「これからよろしくね、彩耶ちゃん」
「うん、よろしく、紗奈さん」

 笑い合って握手をし合った。



「ぁ、私は呼び捨てでも、好きに呼んでね♪」
「私も呼び捨てでいいのに……」
「いや、彩耶ちゃんは彩耶ちゃんだよ」
「何それ……」

 何言ってるの、紗奈……と呆れたように呟いた彩耶ちゃんの肩の力が抜けていてホッとした。



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