「ママン、どこに行くんだ?」
「ちょっと日本まで」

 日本ですと!?
 オレも行きてぇ……

「ターゲットがバカンス中でね」

 時間がかかりそうだから、こっちでの私指名の仕事も代わりにやってもらえると助かるわ。

「ごめんなさいね、ナギサ」
「ママン……」
「ナギサ、あまり落ち込むな」

 セツナは日本好きなんだ。

「昔日本に遊びに行って一年くらい帰ってこなかったんだ」
「……そんなに?」
「あぁ、熱狂的でな……雪に野菜? そんな当て字のシールをあちこちに沢山貼ってたくらいだ」

 マスターが指で示す先には、小さな千社札のシール。
 あぁ、雪菜って誰だよ? マスターの想い人? って思ってたけど。

 これ、《ゆきな》じゃなくてセツナかよ、読み方!!

「これ、ママンだったんだ……」
「そういうこった」

 それにしても、暗殺者としての通り名? コードネームがスノウだから雪にしたんだろうか?
 きっと母さんならそうなんだろうな〜……



 仕事着に着替えて出掛ける。
 オレの仕事着は黒スーツだ。
 やっぱ暗殺って言ったら、こう……

「渋くてカッコイイ……」

 ゴルゴ13みたいな!
 そういうハードボイルドだよな!

「ん? 今ナギサ何か言ったか?」
「何も」

 あっぶね!
 日本語習ってねぇのに日本語使ってたよ。
 マスターに聞かれてなくて良かった〜!

 まぁ、でだ。
 やっぱり格好から入るべきだろ、常識的に考えて。
 黒スーツで帽子なんか被れば良いと思うんだ、まだベビーフェイスだから顔を少し隠すためにも。
 近所の洋服屋でしつらえたから、全部イタリア製になったのはいいことか?
 まぁ、イタリアはお洒落みたいだし、いっか。

 銃使いと言えば、さっき上げたゴルゴも良いけど、次元も良いよな!
 やっぱ渋いのがいいよな〜!



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