唐突だが、オレはイタリア人らしい。
ちょっと待て、母さん(らしき人)!
今日まで英語しか話してなかったじゃないか!
……ようやく喋れるようになったのに。
やっと帰ってこれたわ、って、イタリアに入った途端呟かれたら確定ですよね。
今からイタリア語覚えなきゃ……(汗)
日本語と文法違いすぎなんだよ!
オレ、そんなに頭良くない! 誰か助けて!!
とか言っても、自分で覚えるしかないんだけどな……
そうだ、イタリア人になったっていうことはまぁ置いておいて。
オレ自身の外見を全く話していなかったな。
正直、日本人の時と何も変わっていない。
鏡の中を覗いてみたら、幼き頃の自分――日本人顔すぎるぜ、これ――だったし、髪も眼も真っ黒で、前とまるっきり一緒だから違和感全然無いんだが。
あぁ、前と違うのはもみ上げ部分の癖毛だな。
面白いくらいに丸まるので、ちょっと伸ばしてみている。
しかし、何でもみ上げ部分なんだ? これがひげとかだったら男爵の格好して赤ワイン手に、みたいな真似をして遊ぶのだが……
あぁ、子供に髭は生えない、なんていう突っ込みはいらないぜ、わかってるから。
ただの遊び心だからな。
「セツナ、お帰り」
「ただいま、マスター」
迷うこと無い足取りで、母親である彼女はバーへと入っていった。
そうか、母の名前はセツナと言うのか……
はじめて知ったよ。
「居ない間に依頼は?」
「お前さん宛てのはいくつもあったけどな……どれも断っておいた」
「ありがとう!」
依頼? 母の仕事って何なんだろう?
まぁ、黒いカードで支払いしてるのを見て、まさかブラックカードか!? と思ったけどな。
流石にそれは無いだろう、とは思ってたんだが……
「来週辺りから依頼受けるから、これ新しい連絡先ね」
「おう、わかったぜ」
ペラリと手渡したメモに電話番号でも書いてあったのだろう、それだけ済ませると母は店を後にした。
まさか、とは思いたいんだが、春をひさいでる、とかじゃないよな?
好色な視線に晒されていることを綺麗に無視していた母の姿に若干の不安を覚えた。
ちなみに、母の職業を知ったのは、それから一年以上後のことでした。
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