気付いたら赤ん坊だった。
自分でも何を言っているのか、わかっていないが、朝起きたら赤ん坊だったんだ。
昨夜はいつも通り、自分のベッドに入った記憶がある。
そして、寝た。
これは間違いない。
で、瞼の裏に日差しが当たって朝か、と思ったら。
「あら、起きたの? ナギサ」
と微笑む気配の女性に抱き抱えられていたのだ。
寝ている間に何があったー!!
まぁ、そうこうしている内に、自分が赤ん坊になっていることが判明した。
そりゃそうだよな〜、いくらまだ高校生とはいえ、こんな細い女性の腕で抱き上げれるサイズなんだもんな。
当たり前だわ。
ってか、オレの名前は梛沙だー!
そりゃあ、カタカナにしたらナギサだよ? でも、なんで同じ名前で呼ばれてるのさ……
そんなことがあったから、赤ん坊になっているっていう事実に最初気付かなかったじゃないか!!
赤ん坊と言えば、寝ることが仕事。
このオレも寝ることと考えることしかできない。
だから、ゆっくりと色々考えられた。
オレは死んだのだろうか?
これはいわゆる転生というやつなんだろうか?
オレとしては、一般的な日本人らしく無宗教だったんだが、一般常識程度はあるぞ?
生まれ変わりは魂の浄化がなんちゃらで、記憶無くなるはずだろ?
なんちゃら、とかすまん。
流石に覚えてないよ、理由とか……
でも、しっかり覚えているんだよな〜、オレのこと。
じゃ、オレは生きていて、これは夢?
何度眠ったり起きたり繰り返しても目覚めないって無いだろ、流石に。
一応、健康体だったオレだが、若くても寝ている間にポックリ逝くことがありえるのはわかる。
脳溢血でも起こしたら一発だろうしな。
でも、何でオレが? とも思っちゃうよな。
――赤ちゃん生活が進んで、どうでも良くなったが。
もう一度人生をやり直せると考えれば儲けもんだろ。
どうやら母親の外見と言葉から、日本じゃなさそうだが、英語の一つや二つ、根性でマスターしてやるぜ!
ま、日本語喋ろうとしても、口がうまく回らないんだ……舌の動きって複雑……
ついでに、動けるようになるための寝返り訓練から始めて、歩けるようにまで、と言ったら、骨折後のリハビリなんて目じゃなかったぜ。
どんな苛酷な訓練だよ!
どこの軍隊だよ!
あまりに辛くて泣いてしまったくらいだ。
外見赤ん坊だから許されるが、かなり恥ずかしい現実だ。
ついでに母乳とか、オムツ替えとか、どうしても必要になるんだよな……
果てしなく羞恥プレイだよ、赤ちゃんライフ。
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