「もう帰っちゃうの〜?」
「ぁ、あぁ……仕事も何もかもそのままにして来たからな」
「そうなの〜……」

 残念だわ、と頬に手を当てる母さんに、ラルの頬は引き攣っている。

「ナギサ、私たちも帰りましょうか?」
「それはそれで構わないが……」
「せ、折角休みに来ているのだから、予定通りに休むべきだと思う!」

 そうだ、それがいい! と叫んでいるラルの気持ちは分からなくもない。

「そうねぇ……あぁ、そうだ。ラルちゃん、連絡先教えてv」
「うぇ!? あの、私は仕事上……」
「じゃあ、仕事の連絡先でもいいわ」

 はいはい、諦めろって。
 母さんなら、そこは貰うまで食い下がるぞ?


「コロネロ」
「なんだコラ」
「何かあったら連絡寄越せ」

 母さんがラルを拉致したとか、な。

「……礼は言わねぇぞ、コラ」
「あぁ」

 一応、先に母さんの迷惑を先回りするのも必要だろ。


 帰っていく二人を見送って、部屋に戻ろうとしたら抱き上げられた。

「可愛いカップルだったわねぇ……」
「そうだな」

 両想いなのに片想いだろ、あれ。

「ナギサは彼女いないの?」
「いないなぁ……まぁ、興味無いしな」
「寂しいわね!」
「ママンこそ……」
「そうねぇ……」

 少し遠い目をした母さんは、もしかしてオレの父でも思い出していたんだろうか?
 未だにどんな人だったかも何も教えてもらっていないし、こんなに長く放置されてるなら関わるつもりも無いんだろう、と解釈しているが。

 でも、母さんには幸せになってもらいたい……



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