「キャーッ!」

 どこかハートマークを飛ばしまくったようなテンションの高い悲鳴を上げて抱き着かれた。
 ってか、強い強い……苦しいって。

「離してくれ、ママン……」
「いやぁんv 可愛いvv」

 先程以上に力を入れるでない!

「ママン、離してくれって」
「……ナギサ?」
「そうだって。だから離してくれって」

 セツナから距離を置くように離れて椅子へと飛び乗るように座った。
 すると、カウンターの中にいたマスターが困ったようにこちらを見ていた。

「エスプレッソ」
「……大丈夫なのか?」
「大丈夫だろ」

 赤ん坊が飲んで大丈夫なのか、と心配まで瞳に浮かべたマスターだが、問題無いだろ。
 確かマンガでも飲んでたし、こんだけ身体動くなら小さくなっただけだろうし。
 ――っていうか、それで寿命が縮まろうが何しようが今更だ。
 そんなのどうでもいい。

「――何があったんだ? ナギサ」

 注文のエスプレッソを差し出しながらマスターは尋ねてきた。

「こないだの依頼の『イ・プレシェル・ティ・セッテ』で集められた全員が『アルコバレーノ』になっただけだ」
「ナギサ、何に選ばれたの?」
「最強の暗殺者?」

 って書かれてたけど、本当の最強はそこにいる母さんだろうよ。
 絶対勝てないし、オレが何度と無く死んだと裏社会に情報流れたのは母さんに引き摺られてあちこちの国に行って音信不通になったからだし……

 あぁ、そういえば、あまりにも何度も死んだと情報が流れるから、死んでも復活しているんじゃないか、という解釈をされたらしくって。

 『リボーン』

 と言われたりもしてるんだっけ。
 あれ? これもまたリボーンがオレじゃないかっていう説の裏付けになるのか?

「そうなの、ナギサがねぇ」
「ママンの方が最強」
「いやぁ、本当可愛い!!」

 再び抱き付きに向かってこられ、逃げるのも諦めて腕の中に納まった。
 確実に逃げても追いかけっこが続くだけであって、疲れるだけだろう。

「こうやってると、ナギサが小さい頃に戻ったみたい!」

 私まで若返った気分だわぁ♪

「ね、マスター!」
「そうだな……セツナもあまり変わってないからな」

 そうだねぇ、若いのはいいことだけど……母さん若々しいし、美人だし。
 でも、この間ナンパされてたよね、オレより若いのに……
 母親の恋愛を止めるつもりは無いけれど、オレより若いのだけは止めてほしいかなぁ……

「そうだわ! 温泉に行きましょう!」

 また始まった。
 温泉が大好きらしくって、幾度と無く温泉に行くから、と拉致られて死亡説が流れたことやら……

「マスター、また何かあったらよろしく」
「あぁ、わかったよ」
「マスター、オレみたいにおしゃぶり下げた小さいのが来たら場所言っていいから」
「いいのか?」

 いいよ、多分用事あるんだろうし、オレと同じように小さくなった残り6人の誰かだろ?
 用があるなら会うよ、何年になるかは分からないけれど、確実に長い付き合いになるだろうしな……



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