「本当に良いのか? ルーチェ」

 妊娠中であるルーチェがこのアルコバレーノとなることは本当に良かったのか?
 一族に伝わる役目も存在するらしいのに、抱え込みすぎでは無いだろうか?
 だが、代わりに大空を務められる者がいるか、と聞かれれば、いないとしか言えない。

「えぇ。でもこれが私の運命だから、避けて通ることはできないの」

 運命。
 そんな簡単な言葉で終わらせていい問題なのか?
 なら、オレが生まれ変わったらしいことも、この世界のこれからの流れを多少なりとも知っていることも……リボーンの立場にいることも。
 全て運命だとでも?

「オレは運命なんてもんは信じない」

 このオレ――梛沙に変わった時点で、決まった流れだけに進めるわけが無い。
 まずオレはリボーンとは性格が違うからな。
 ――愛人なんかいないし。

「人の行動一つで変わるだろ」

 そんな決まった運命だけじゃないと信じている。

「降りてもいいんだぜ」

 ルーチェ以外に務まらないと思っていても、どこかでつじつまが合うようにできているはずだ。
 でなければオレが選ばれるわけが無い。
 しかし、首を振る。

「星が動くわ、私の運命と」

 そう、これから起きるに違いない。

「そして、ナギサあなたの運命もね」

 今この時気付いているのは彼女とオレだけだろう。
 あと少しの平穏を享受しているだろう仲間たちに、そしてオレたちに――平等に月明かりは照らしていた。



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