「霧切さん、トリックオアトリート!」
「…」
「…」
「…」
「…あの、霧切さん…」
「…あなたは何をしているのかしら」
「え」
「あなたに渡した書類、どうなったの?明日締め切りよ」
「…」
「…大事な書類を後回しにした挙句可愛らしい犬の仮装をして…随分と気楽なものね」
「狼人間なんだけど」
「そんなことどうでもいいわ」
「…」
「…はぁ。まったく。で、お菓子でしょう」
「う、うん…」
「はい」
「…え、チョコ……」
「これでいいでしょう」
「霧切さんもお菓子持ち歩いてるんだね」
「…」
「有難う。嬉しいよ」
「…そう。良かったわね」
「それじゃあまたね霧切さん!」
「書類、期日は守ってよね」
「う、了解…」
「…」
(お菓子なんて普段持ち歩いてないわ。ただ、今日がハロウィンだったから。いつ言われても大丈夫なように用意していただけ)
走り去ってく狼人間の姿を見ながら一人くすりと笑みを浮かべた。私も大概甘いのかもしれない、と。
←