「その格好どうした」
「あ、日向くん!トリックオアトリート!」
「…は?」
「は?じゃないよ。今日はハロウィンだよ」
「あぁ…」
「あぁ…って忘れてたの?」
「忘れてたな」
「えええ…」
「で、その仮装で犬の格好しているわけか」
「狼人間だけど」
「どっちも似たようなもんだ」
「…」
「(あ、すねた)…あー、で、お菓子渡せばいいのか?」
「え、あるの」
「西園寺にあげた金平糖の残りがある。これでもいいなら」
「金平糖?わああうん全然いいよ!」
「じゃあ、はい」
「有難う日向くん!…でも残念だなぁ」
「何がだ?」
「日向くんにイタズラしたかったのに。これじゃあ出来ないよ」
「…どういうことするつもりだったんだ?」
「いや別に大したイタズラじゃないんだけど……ラクガキでもしようかと思って」
「ラクガキ?」
「うん。どこか体の一部に僕の名前でも書いておこうかなーと」
「…苗木の名前…」
「今日一日中それ消さずにいてもらおうと思ったんだけどなぁ…まさか持ってるとは」
「……」
「でも金平糖ほんとにありがとね!とっても嬉しいよ」
「…やっぱ返せ」
「え」
「んで、名前書け。どこに書く?…あぁ目立つところがいいな。顔にするか」
「…や、あの、日向くん?」
「なんだよ、お菓子あげなかったらイタズラするんだろ。ほら、ラクガキしろよ」
「(何この強制感…)」
結局顔に『苗木誠』ってラクガキしました。
そしたら日向くんはとても幸せそうな顔をして「ちょっと狛枝辺りに見せてくる」とか言って行っちゃったけど、何をそんなに喜んでいるんだろうか…。
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