こんばんは
2012/12/02 21:55
「不毛だ」
弟はそう静かに呟くと窓の外に広がる星空を眺めた。
きらきらとたくさん輝く星々が弟と俺その他諸々の地球人を見下ろし照らし続けるその姿はとても美しいが弟の目を奪うのだけは頂けない。
そっと背後からその目を手で覆い星を見せないようにすれば、冷たい液体が皮膚に触れた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「創でいい」
「違うよ、お兄ちゃんだよ」
聞き分けのない子だ。少し前まではなんでも俺の言うことには従ったくせに反抗期だろうか。
なんとなく寂しい気分になりながらそのまま自身の胸の中に弟を引き入れる。柔らかい眼球を潰さないよう配慮しゆっくりと引けば、弟は抵抗するかのように力を入れ動かなかった。
「僕たちってオカシイ」
その代わりと言わんばかりに紡がれた言葉は自身が求めるものとは程遠いもの。
生ぬるさを含んだ声音は俺の心をちくちくと刺激し口内でどろりと唾液が多く分泌させられる。現実の味。ごくん、と飲み込む。
「そうか?」
「うん」
「別におかしくない」
「おかしいよ。同性で兄弟、不毛だ」
「そんなことはない。俺たちは恋してるだけだ」
それのどこがオカシイというのか。言えば、弟は笑う。
「恋って、こんなどろどろしたものだっけ」
さあな。
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